(感想)「パルミジャーノレッジャーノになれなかったチーズの保管棚」の回でご紹介したあのひどいパルミジャーノレッジャーノの工場(a)でも、牛を育ててミルクを作るところからやっていました。しかし、チーズマーケットが薦めるここのパルミジャーノレッジャーノの牧場とは違う点がいくつももありました。こうした違いが両者のパルミジャーノレッジャーノの最終的な質の違いやおいしさの違いになっているのだと思いました。例を挙げますと、aでは、ホルスタイン種の牛だけでした。乳量が多いことがホルスタイン種にする大きな理由です。また、出産方法でも違いがありました。aでは、冷凍保存した精子を使って人口受精を行い、全ての牛がいつ出産するかの時期をコントロールして毎月子牛が一定数生まれるようにしています。その目的は、一年を通して一定の乳量を確保するためです。一方我らのパルミジャーノレッジャーノの牧場では、そういうことはしません。どの牛も自然のままなので、みな出産時期がほぼ同じ頃になります。私達が4月に訪問した春さきがその時期にあたるようです。でも、これは生産者にとっては困ることがあります。出産する牛が増えてくるとミルクを出してくれる牛が減ることになるので、牧場全体のミルク量は減ります。それは生産できるパルミジャーノレッジャーノの量が減ることを意味します。ここでは最高10個のパルミジャーノレッジャーノが作れる釜がありますが、取材した4月には、一日6個のパルミジャーノレッジャーノしか作っていませんでした。そして出産シーズンが終わるとミルクも徐々に増えていき、また8個・10個と作れるようになるのです。生き物相手の仕事なのに、ミルクの生産量をコントロールしようとすれば、失うものがあると私達は思います。生産者の最終的な目的やねらいは一体何なのか? 会わないと見えて来ません。「ミルクの生産量なのか、それともミルクの質なのか。」それは生産者それぞれで違います。その為にどのような牛をどれだけ飼い、どんな餌と牛舎で育てて行くかで変わってくるのです。(aでは、ある国のある大手チーズ輸入会社がお得意様なので、優先することは質ではなく量を確保することになりがちです。その結果、あのようなひどいパルミジャーノレッジャーノになるのだと感じました。)今回、この2つの牧場を取材することができて本当に良かったです。生産者の哲学がどうなのかを知っておくことが、責任と自信を持って売るためにとても大事だと感じています。 |