2通りある?オリーブオイルの収穫方法(アーリーハーヴェストとレイトハーヴェスト) |
今回は、オリーブオイルの収穫方法の違いについてのお話です。 |
1月(2006)にオーストラリアにあるケアンズのスーパーマーケットで、オーストラリア産のヴァージンオリーブオイルを見かけました。とても興味が沸き、研究の意味でも買ってみることにしました。下の写真は、その時に買ったオリーブオイルのボトルです。右の写真はラベルを拡大したものですが、下のほうに「EARLY HARVEST」と書かれていました。その隣には、同じメーカー製の別のタイプのオリーブオイルもありました。そちらには、「LATE HARVEST」と表示されていました。シチリア島(イタリア)のエクストラヴァージンオリーブオイルの生産者を複数訪ねた経験から、オリーブの実の色が緑のうちに収穫し、即日オリーブオイルにするのが当たり前だと思っていた私には、この「LATE HARVEST」というオリーブオイルの味は、一体どんなものなのか気になりました。ふとラベルの上の方に「ViVa」と書かれているすぐ下のオリーブの実のを見ると、実の色が2つのボトルで違っています。下の写真の「EARLY HARVEST」では、緑色のオリーブですが、「LATE HARVEST」の方では、黒いオリーブでした。(外国語が分からなくても、こうした絵の違いで消費者が選びやすくしているのは素晴らしいアイデアだなぁと感心してしまいました。)と同時に、オリーブが黒くなるまで待ってから搾るなんて事もあるのだと思いました。 |
バックラベルを見ると、この2つのオリーブオイルの風味や使い方の違いが出ていました。「EARLY HARVEST」では、”緑のオイルの香り、サラダや地中海料理にお使いください。”と。また、「LATE HARVEST」の方は、”穏やかな黄金色のオイルです。一般的なお料理にどうぞ。”となっていました。どちらの味が好きかは個人的な問題ですが、このコメントを読んだだけでも、私は「EARLY HARVEST」の方が好きだと思いました。実際に食べてみると、草のような緑を感じる風味があり、フレッシュ感のあるオリーブオイルで好みの味でした。こちらのオリーブオイルを買って良かったと思いました。 |
すぐにある記憶がよみがえりました。2004年に開かれたCIBUS食品見本市(イタリア・パルマ)に行った時に、イタリア各地のオリーブオイルが出展しているブースを見て回った時の事です。イタリア北部のリグーリア州のオリーブオイルをいろいろ味見をした時に、今回の「LATE HARVEST」のオリーブオイルのようなフレッシュ感がないオリーブオイルが多いことに気が付きました。私達が好きなオリーブオイルの風味は、例えますと「青りんごの様な」、「草原の香りの様な」オリーブオイルなので、どうもこの地域には好きなオリーブオイルが無いと感じました。そして、その理由がオリーブの品種の違いというよりも、オリーブの収穫時期の違いに由来しているのではないかと思います。別のリグーリア州のオリーブオイルのメーカーの方が、胸を張って次の様なことをおっしゃいました。「うちのオリーブオイルは、樽にたくさんのオリーブを入れて上から機械でプレスしないで、オリーブ自体の重みでじっくりと取り出しているんだ。」と。「自然にしみ出してくるオイルだけを集めているんだ。」と。つまり、「プレスしないで自然に出てくるから美味しいんだ。」と云いたかったのだと思います。しかし、この話には別の意味があることも、今回のオーストラリアのオリーブオイルから分かりました。つまり、このリグーリアの生産者の場合は、全てのオリーブの実が、それだけ”熟して柔らかい”ということなのです。オリーブは緑色のものではなくて、今回の話で登場した黒いオリーブを収穫した「LATE HARVEST」の方と同じやり方なのだと合点がいきました。実際にオリーブオイルを飲んでみましたが、やはり緑っぽいフレッシュ感はなく、結局輸入することはありませんでした。一方、チーズマーケットで輸入しているエクストラヴァージンオリーブオイルの中で、10月(2005)にも取材に行ったコッレ・サン・ヴィターレ(イタリア・シチリア島)のアントニーノさんが次のようなことをおっしゃっていました。「高品質の、つまり酸度の低いオリーブオイルを生産するには、まだ若い緑色をしたオリーブを選び収穫をし、なるべく早く(12時間以内に)オリーブオイルにすることが大切だ。」と。また、2ヶ月間に渡る収穫時期はとても忙しくて人手が足りなるそうです。そして、「収穫時期の最後の方になると手が回らなくなってきて、最適な時期に収穫されずに残ったオリーブが、黄色や茶色、黒くなったあとからようやく収穫してオリーブオイルにしたものも出てくる。」とおっしゃっていました。「そうしたオリーブオイルは、HS(ハイスタンダード)の高品質にはならないので、別のタンクに分けて別の名前で販売している。」と説明してくれました。今回のこのオーストラリアのオリーブオイルのメーカーも2種類のオリーブオイルを生産しているとバックラベルに書いてありましたが、実はこうした収穫の事情があって、フレッシュ感のあるオリーブオイルとそうでないオリーブオイルが出来てしまうのだと思いました。いずれにして、オリーブオイルは本当に多くの労働力があって初めて生まれる有り難い農産物であることを再認識しました。生産者に感謝して、目の前にあるオリーブオイルを大事に頂きたいと思います。 |
2通りある?オリーブオイルの収穫方法(アーリーハーヴェストとレイトハーヴェスト) |