|  TOP  |  お買い物方法 | シチリア島の旅日記  | チーズ・モンドールAOC図鑑 | イル・ド・フランスとフランシュ・コンテのチーズ旅日記  |

どのメーカーのモンドールも皆美味しいとは限らない(ドゥー県・ポンタリエ)



2月16日の朝8時、ホテルから歩いて15分ほどのところにあるモンドールの工場を訪ねました。この地帯は工業団地のような地域で、郊外型大規模小売店舗や倉庫、工場が立ち並び、道路も広くトラックがスピードをあげて走っていきます。タクシーも前日に予約しないと来てくれない所だったので、歩いて出掛けました。

産業道路をはつらつ歩く美奈子店長


初めに驚いたのは、こうした工業団地の場所にAOCのチーズを作る工場を建てることが出来るんだなということでした。ポンタリエは、標高800mぐらいの町ですが、斜面の町ではなく、どこまでも平地が広がる石狩平野のような地方の田舎町です。(下の写真をご覧ください。)

自動車メーカーや大手家具メーカーがあります。 市街地から2キロほど離れた郊外がこの地域です。

このメーカーは、日本でも売られているモンドールを生産しており、こちらの大型スーパーでも大量に売られていました。

中を見せてもらいましたが、写真撮影はほとんど禁止されました。私達が輸入している協同組合のモンドールの工場と違うのはもう明らかです。まず、モンドールを作る最初の段階のミルクを固まらせる部屋が、何だかとても臭くて逃げ出したくなりました。その時、私は思い出しました。「北海道のある大手チーズ工場がある町で、その入り口の道路脇に居ただけで感じたあの臭さ」を。それは、口にする食べ物を作る工場から発せられるにおいとは、到底思えないほどの悪臭でした。また、働く人のエプロンが汚いです。またモンドールをエピセアの樹皮で巻く部屋では、女性達がマスクもせずに、おしゃべりをしながら作業をしています。また所々の床には、塩素系の漂白剤か消毒剤の泡がばら撒いてあり、更に不快な臭いを誘発していました。見学の後、私達が着ていた薄っぺらな使い捨てのような白衣も、捨てずにそのままハンガーに戻していました。工場に入る前に見学者の靴を消毒する為の浅いプールもありませんでした。これでは、外からリステリア菌などが進入する可能性が大きくなります。従業員が多いというのは、誠にもってお粗末な衛生管理になりがちで、細部には目が行き届かないんだなぁと思いました。一言、「不潔なチーズ工場」とでした。


遠く離れた日本でモンドールを売る時に、「幻のチーズ」とか「山と緑の自然豊かな地方のチーズ」などというネット店がありますが、こんな超工業的な不衛生な工場で大量生産されているモンドールをつかまえて、そんなコピーは無いんじゃないのかなぁーと思います。こうしたモンドールはスーパーなどで山積みして売られています。私達もこんなモンドールAOCのチーズ工場が在るとは、本当に驚きました。実際に行ってみて、現場を見ることの重要性を認識しました。今回、いろいろな規模のチーズ工場を見学できて、本当に良かったと思いました。少人数のチーズ工場では、細部にまで目が行き届き、生産量は少ないもののそれだけ高品質のチーズが生まれます。消費者は、単に値段の安さ、単にフランス製である、或いはAOCだということで食品を選べば、全く変なものを買わせれることになります。また先のネット店のように無責任な言葉を使っていないかをよく読み、店主の姿勢を見極めることが大切だと思います。私達チーズマーケットでは、こちらのTVでコマーシャルを流すような大手食品メーカーの物は扱いません。何故なら私達が売る食品は、全て私達自身が毎日食べるものだからです。日本の津々浦々のスーパーやデパートにまで広く出回っているフランス製のジャムやチョコレートなどの食品が、さほど美味しくない理由が、今日の大手モンドール工場と同じような所で生産されているからなんだと容易に理解できました。日本でも大手食品メーカーで働く人は、自分達が作るハムやパンを自分達は絶対食べないということを何度か耳にしたことがありましたが、このモンドールの工場を見て、そんな噂が立つような工業的な食品工場が日本以外にも、この農業大国であるフランスさえも実在することが分かりました。今回の取材を終え、私達と大手食品メーカーとでは、目指している方向がまったく違うと再認識できました。


どのメーカーのモンドールも皆美味しいとは限らない(ドゥー県・ポンタリエ)