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やぎのチーズをじっくり時間をかけて食べるのもいい。



今回はやぎのチーズを知るための知恵です。やぎのチーズに関わらず、ナチュラルチーズは時間と共に味が変化していきます。刺身のように新鮮なものを良しとする日本の食文化で長く育つと、「味が変化する」と聞くと、「劣化、つまり、悪くなる。」ように感じるかもしれませんが、むしろヨーロッパ産のチーズの場合には、味が良くなることが多いです。味噌も醤油もそうですが、身近にあるのは大量生産のものしかないので、発酵の違いやおいしさの違いを経験することが出来ないのが現状です。今回はそうした発酵の世界をやぎのチーズを例にして少しのぞいてみましょう。

。した。

では、さっそく上の写真を見てみましょう。2つは同じシャビというチーズですが、その違いは輸入してからの時間の長さだけです。(実は全く同じものを別の日に撮影したものです。)左が輸入して1週間後、そして右は3週間後です。どちらもその表面はべたついておらず、適度に乾燥していていい状態だといえます。写真では分かりませんが、部屋干した時の生乾きのような悪臭もありません。(この悪臭をやぎのチーズの臭いだと勘違いしている日本人が本当に多いです。やぎのチーズが臭いなんてことはありません。キッパリ。)ところが外見の様子は全く違います。もしも、右の写真の様なやぎのチーズを日本でお届けしたら、不良品だと誤解される方がほとんどだと思います。しかし、原産地フランスでは、この右のやぎのチーズ以上に表面にいろいろな色のカビが付いたシャビが多く売られています。つまり、そのように数週間置いておいたやぎのチーズの需要があるのです。何故か? それはよりおいしいからだと思います。(もちろんこうした味が嫌いな方もいらっしゃいます。)


やぎのチーズを自分で見て買う時のポイントは、たった3つです。

 

1)臭いを嗅いでみて、汗臭くないか、蒸れたような臭いがないかを調べます。

2)本来そのチーズが持つ形が保たれているか。ヴァランセなら美しいピラミッド型を保っているか、ブリケットならレンガの様な四角を保っているかなどです。

3)表面が少し乾いているかどうかが大切です。商品を指で触ることは出来ませんが、見た目でじゅくじゅくしているようなやぎのチーズはいけません。詳しくは店員の方に聞くのがいいでしょう。

補足;初めから包装してあるやぎのチーズを買うのは止めましょう。上の全ての条件を満たせなことを承知ですぐに売れるようにしただけのチーズなのでおいしさは期待できないからです。


下の2つのヤギのチーズは、ローヴ・デ・ガリッグというチーズです。はやり左側が輸入して1週間目、右が3週間目です。先の写真と合わせて見比べると時間と共に全体が黄ばんできて、表面にカビも生えてきます。でも、このカビは食べても大丈夫です。何度もいいますが、不良品ではありません。



。

では、ここで先の右に写真の長く置いてカビが生えていたシャビを切って見てみましょう。



した。

如何ですか? はい、この通り中は出来立ての様な白いチーズなのです。もちろん、中までカビが生えていることはありません。実際に食べてみます。コクがより出ています。片や一番上の左の若いシャビは、柔らかいこと。そしてヨーグルトを固めたような酸味が魅力です。しかし、置いておいた期間が短いために発酵が十分に進んでいないので味わいは単調です。一方、左のやぎのチーズですと、時間が長いのでそれだけ蛋白質が分解されて出来た各種アミノ酸が含まれて複雑な味わいになっています。香りもはっきりとしてきます。



では、どちらのシャビが優れているのか? どちらを選べばいいのでしょうか?



正解は一つではありません。個人個人の嗜好で右と左のどちらを選ぶかが決まるだけです。でもいい方法があります。1つを買って右と左の両方の味を味わえる方法です。それは、買う時に左の様な若いやぎのチーズを買うことです。買ってすぐに食べてみます。その味を覚えておきます。でもただの記憶はあやふやなので、必ずメモをとります。色、形、香り、そして味わいです。またデジカメで記録しておくと、とても参考になります。そして、ラップをしないでお皿にのせて時々ひっくり返して(参照;クイズQ9)、一週間待ち、また少し食べます。こうして3週間ほどまでにいろいろな味を見るのです。そうすれば、時間とともに今回買ったやぎのチーズがどの様な味や外見に変化が起きてきたのかが分かります。それを何度か繰り返すことによって、自分のやぎのチーズに対しての嗜好が見えてくるのです。こういう経験をすると後は簡単に自分の嗜好に合ったやぎのチーズを店頭で確実に選ぶことが出来るのです。最後に私の好みですが、どの時期のやぎのチーズも好きです。自分が食べる季節や温度、体調でどれぐらい熟成したやぎのチーズを食べるかを変えています。といますか自然に食べたいチーズに手が伸びるのです。



やぎのチーズをじっくり時間をかけて食べるのもいい。