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表面にたくさんのカビが生えたやぎのチーズは大丈夫なのか?



今回は、やぎのチーズの表面にたくさんのカビがついている場合について考えてみたいと思います。白カビ、青カビ、ウォッシュなどに比べて、やぎのチーズの状態を見極めるのはとても難しいです。それは変化が激しいことと、ただ外見を見ただけでは判断できないことが多いからです。また、チーズに馴染みの少ない日本人にとってはさらにやぎのチーズを理解するのは困難です。それはやぎのチーズに触れる経験がないことの他にも、日本人の持つ常識そのものが、やぎのチーズの理解の障害になっているからです。チーズなどのフランスの食品を理解するには、日本での常識や考え方を一旦白紙にしてくことが大切です。今回のお話もそうした日本とフランスの常識の違いが分かる一例だと思います。頭を柔軟にして未知のチーズについていろいろな方面から考える機会を増えれば、常識の違いを理できてそれが異文化の理解につながるのではないかと思います。何かの考えるきっかけになれば幸いです。

チーズマーケットでお勧めしているセル・シュール・シェール BIETS です。

まず上の写真をご覧下さい。これはパリのランジス市場から輸入したその日に写したやぎのチーズです。名前をセル・シュール・シェール BIETSといいます。しかし、いつも届く若めのやぎのチーズとはどこか様子が違いました。といいますのも、いつもは下の右の写真のように若いセル・シュール・シェールが届き、その表面は木炭で包まれているので、灰色から黒色の均一な色になっているからです。ところが今回のチーズは下の左写真のように、表面には既にいろいろな種類のカビが生えていました。こんな状態で果たしてチーズの味や品質は本当に大丈夫なのでしょうか? もしも、チーズマーケットから左の様なセル・シュール・シェールが届き、それを見た瞬間にそのお客さんは、一体どう思うわれるのかと予想されますか?・・・・・

チーズマーケットでお勧めしているセル・シュール・シェール BIET です。この作り手のセル・シュール・シェールもおいしです。

上の左のような色合いのセル・シュール・シェールを見た日本人の消費者なら、ほぼ100%「不良品だ。」と思われることと思います。(チーズマーケットの常連のお客様なら、「良いチーズが来た。」と喜んでもらえますが。)理由は余りにも見た目が悪い思うからです。日本では、こんなにカビが生えたチーズを売っている店はほとんど見かけません。今までに見た経験が無いと、より違和感を感じると思います。また、日本人は食べ物においてもおいしさよりも見た目を重視して買う傾向があるようです。色・形が同じで揃っているとか、綺麗な包装がしてあるかなどが時として最優先するほど大事なようです。こうした常識ががっちりと頭に収まっていると、もう不良品であること以外には思いつかなくなるのだと思います。

見た目が悪くても中身は、真っ白で美しいこともあるのがやぎのチーズなのです。

しかし、結論を先に述べますと上の切った写真の通り、「左の写真のセル・シュール・シェールも、とてもいい熟成が出来た素晴らしい味のするチーズである。」ということです。右のような若いチーズを上手に熟成させて出来たのが、左のチーズなのです。つまり初めは柔らかくてヨーグルトの様な酸味のあるあっさりとした単調な味だったのが、上手に熟成さて行くと水分が程よく抜けて身が引き締まり、コクが生まれてきます。酸味が薄れ、うまみが増してまろやかさが出てくるのです。しかし、全てのやぎのチーズが簡単に皆そうなるわけではないのです。包装しすぎたりして蒸れてしまったり、水滴が表面を濡らしてチーズが溶け出してきたりといった劣化した美味しくないやぎのチーズが日本で多く出回ってしまっています。また最初からおいしくない大手メーカー製のやぎのチーズが出回っているのは、日本に限らず、フランスでも同じです。そうしたやぎのチーズを一度でも食べた日本人は、即「やぎのチーズはとても臭い。」とい記憶して、それが噂として日本中で広まって誤解されたチーズになっているのです。生産国の現地フランスでは、そうしたひどい状態のやぎのチーズはあまり見かけません。それは売り手も消費者も広くやぎのチーズのことを良く理解していて目利きができる人が多いからでしょう。消費者の目も厳しいので、劣化したチーズを並べて売りつける店も少ないのだと思います。日本では、買う側も売る側もよく理解していないので、知らないままに劣化したチーズを売ったり、見抜けないままに買ったりしているので、不本意な味にがっかりすることが多いのだと思います。左の写真のような見た目は悪いけれど熟成の良いやぎのチーズは、各地のチーズ専門店やマルシェ(朝市)などで日常的に売られていますし、お客さんもそれを望んで買って行かれます。フランス人は、「やぎのチーズもおいしい。」というのが常識です。では、これからどうしてこんなに見た目が悪いのにいい状態なのかについて、順を追って解説していきます。


ラップに触れて表面のカビがへたっていますが、いい状態です。

 

1.まず、やぎのチーズがいい状態かどうかの第一の判断は、「香り」です。むっと来るような蒸れたような臭いや洗濯物を部屋干した時のような生乾きのような臭いがするものを選んではいけません。チーズに鼻を近づけて嗅いでます。やぎのチーズにもいろいろな香りがするものがありますが、今回の様に一面にカビが生えている場合には、かびた畳のようなカビの臭いがするだけで、やぎのチーズの香りはほとんどしません。これはこのチーズが蒸れていないことの証明です。買う時は香りを確かめさせてくれる店で買うのがいいと思います。

ぬるっとこないのが、いいやぎのチーズの条件です。

 

2.次に大事なのは、「表面が濡れていない。柔らか過ぎない。」ことです。ラップなどをあててチーズを指で直接触らないようにして、指で軽く表面を5cmほど動かします。もしも、その時に表皮が指で押されて剥がれたり、ぐにょとへこんだりしたら、それは柔らかいことなので、いい状態のやぎのチーズではないので買ってはいけません。買う時には触らせてくれないと思いますので、担当者に聞くのが良いと思います。買ってからぜひ自分でやってみて経験を積んで下さい。

輪郭がハッキリとしています。いい状態です。

 

3.この1と2の結果からそのやぎのチーズを見極めることが出来ます。では、実際にナイフで切って見ましょう。左の写真です。如何ですか?表皮と内側との境目がハッキリしていますね。これが良い状態のやぎのチーズのカット面です。このチーズの場合、厚みが左側で薄く、右側で厚くなっていて形がいびつで整っていません。この形の悪さを問題にしている記述を本やネットで見たことがありますが、それは間違っています。多少の形のゆがみでしたら、そのやぎのチーズの品質の良し悪しには影響はないことも付け加えておきます。

表面の青カビは味に辛さを与えます。

 

4.さらに一口サイズに切ってみました。見とれるほど綺麗な白と黒のコントラストですね。表皮と内側がびしっと区切られているこの状態こそが、まさにいい状態のやぎのチーズのお手本と言えます。おいしいそうです。

辛いのが苦手な方は、皮をナイフで取るといいでしょう。

 

5.このままがぶっと皮ごと全て食べられます。しかし、これも個人の嗜好なので皮を取り除いて、白い内側のチーズだけを食べるのもいいと思います。表面は青カビが多く生えているとピリッとした余韻が残ります。

やぎのチーズも本当においしくないメーカーもあります。大手のメーカー製のやぎのチーズはもう輸入しません。

 

6.手でつまみぱくっと食べました。私は皮ごと食べています。やぎのチーズはオリーブオイルをかけて食べたり、コショウをおろして振りかけてもおいしいです。


チーズマーケットではフランスからの長旅の疲れを取るために、まず木の箱からチーズを取り出して、別の箱に移します。新しい紙を敷いて、その上に置いて数日休ませます。移す時にはビニールの手袋でチーズを手で持ち、先ほどの2を確認しているのです。1の香りについては、箱に入っていた時に確認しています。そして、今回もいいチーズを選んで送ってくれたんだなぁと感謝したのでした。そして、HPで「良いチーズが入荷しましたよ。」と全国のお客さんにお知らせしているのです。
 
チーズに限らず何事もそうですが、「難しいからこそ、その世界は面白い。」のだと思います。チーズの世界もそうです。いろいろなチーズの状態を見て、実際に食べ、自分で考え積み重ねていく。そして、その経験を生かして、お客さんにおいしやぎのチーズを提供できるチーズ専門店に成りたいと思います。また一般消費者の方にも、このHPを通していろいろなチーズの事例を写真を添えて紹介して、読んで・見て・学べる場を提供してしていきたいと思います。



表面にたくさんのカビが生えたやぎのチーズは大丈夫なのか?