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体外に出た子宮を元の位置に戻します。



前回のお話で、牛の赤ちゃんは無事生まれました。ところが、今回は大きな問題がありました。出産時に母親の子宮が体外に飛び出してしまったのです。早速、獣医さんを呼んで、産後の手術を行ないました。




へその尾で繋がる牛の親子。

 

1.出産直後の母親と赤ちゃんです。どちらもぐったりとして動きません。 二人を細いへその緒がつないでいます。また、お母さんの産道の出口に肉の塊の様なものが付いています。これは子宮です。生まれる時に強く引っ張った勢いで、子宮が体外に飛び出したようです。

心配そうに見守る牛たち。

 

2.柵の向こうにいる牛たちも、心配そうに奥さんに近づいて来ます。獣医さんに電話をした後で、手術に使う道具を運び込みました。ミルク缶にたっぷりと入れた水と子宮を支えるためのまな板のような白い板を準備しました。

子宮がぶら下がった産後の牛。

 

3.獣医さんがやってきました。母親の牛に声を掛けると、すくっと立ち上がりました。獣医さんも合羽の様なものを着て準備OKです。

しっぽに麻酔の注射をします。

 

4.まずは、しっぽを持ち上げて、そこに麻酔の注射を打ちました。麻酔が効くように5分ぐらいそのままで待ちました。そして、体外に出た子宮の状態を見ました。大きな問題はないようです。

15キロほどありそうな子宮とそれに繋がる臓器。

 

5.先ほどの白い板を両側から二人で持ちながら、その上に子宮を載せて、二人で産道の位置まで持ち上げて静止します。

滑りを良くしたのでスムーズに体内に子宮が戻りました。

 

6.獣医さんは、すべりやすいようにする為なのか、透明なローションのようなどろどろした液体を子宮全体に手でまんべんなく塗り、両手で子宮を体内に押し込めてます。

手馴れた手つきで触診をする獣医さん。

 

7.体の中でねじれは無いのか、位置は良いのかを見るために、肩までの長さ分の腕を産道に入れて、触診で様子を確認しています。写真では見えにくいですが、獣医さんの左腕の近くの地面には赤ちゃんが寝ていて、様子を目だけで追っています。母親だと分かるようです。

針で傷口を縫います。

 

8.位置はいいようなので、産道の出口より少し内側の部分を数針ほど縫いました。

ピンで閉じることで傷を早く治します。"

 

9.最後にとても大きな安全ピンのようなもので、留めていました。ピンを刺すときには、ブチッと大きな音が出ました。見るからに痛そうです。そして手術は無事成功しました。傷が落ち着くまで、しばらくはこのままで生活することになります。




(感想)目の前で新しい命が生まれる瞬間に出会えて、いい経験になりました。牛も人と同じで、母親の強さと子に対する愛情の深さを感じました。こんな痛い思いをしてまで、自分の体が壊れそうになる犠牲を払ってまでも、子供を生む母親牛。生まれたその命が尊くない訳がありません。人の命も、そして動物の命も、また動物の命と引き換えに生産されるミルクやチーズなどの食べ物など、その全てに対して尊さや有り難さを感じる心をもっと多くの人が持てるような世の中にならなけらばいけないと思いました。そして、女性が痛みに耐える力のすごさを改めて知り、頭が下がりました。女性だからこそ乗り越えられる力があると感じ、女性の素晴らしさを再確認できた取材となりました。母は、本当に強くて素晴らしい。


体外に出た子宮を元の位置に戻します。