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メルマガ32号(安いチーズ・安売りチーズはお得か?)


--------------Cheesemarket.jp mail news 2003 vol.32-------------

☆☆☆札幌チーズマーケットからのメールマガジン☆☆☆
http://www.cheesemarket.jp

-------------目次-------------

1)安いチーズ・安売りチーズはお得か?

----------------------------2004/4/16----------------------------

今回は、チーズマーケットを創めてから浮沈の連続だった私の経験から
チーズの値段の裏事情と込められた意味を検証したいと思います。


(1)赤札で買うと失う品質?(価格に対する考えが変わった。)

今からもう10年ぐらい前に、私が公立学校の教員を辞め、独立しようと
ドイツワインを有り金(100万円)はたいて初めて輸入した頃の話です。
(チーズマーケットを始める前です。)

もちろん、とても貧乏な生活を送っていたわけですが、当時札幌に知り合
いも無く、飛び込みで札幌東急百貨店のワイン売り場へ営業に行きました。
何とか1週間ぐらいなら試飲販売をしてもいいと云われ、張り切りました。
2週間後に売り場に行き、エプロンをつけ、接客をしていた時にあるお客
様とやり取りがありました。今でも忘れないほどの強い印象を受けた言葉
でした。

その頃の私は、安ければそれが一番だと思っていました。もちろん、良い
物を安くという意味ですが。(その為に勉強をして商社や通関業者に頼ら
ず全て自分達で出来る術を身に付け、コストを削減して、安くしても利益
の出る価格にすることを目指していました。)ところが、そのお客様はシ
ャンパンを買いにこられたのですが、すんなり買おうとしないのです。
「どうしましたか?」と伺うと、どうもこの「赤札」が気になるというの
です。どうして安いのか?安い分だけ、何かマイナス面があるのではない
かと疑われておられました。

そのシャンパンは私が輸入した物ではなかったので、当たり障りのないお
返事をしたと思います。確か、「数量がもう少ないので(半端もの)卸売
り業者が特価で提供してくれたからだと思います。」と。(例えばあと3
本しかない場合、1ケース分の倉庫スペースを使うのは勿体ないので、見
切り売りをしたりする事もよくあります。私ものちに行った経験あり。)

でも、そのお客様が本当に確かめたかったのはそんな事ではなかったので
す。安くしなくてもいいから、このシャンパンがハズレではない事を店側
に保証して欲しい事が分かりました。高い・安いは、どうでもいいという
か、もともと2万円ぐらいのシャンパンだったので、千円、2千円ぐらい
違っても、必ず品質が劣化していないシャンパン(つまりおいしいもの)
が欲しいという事だったのです。少し安くされて、その分味も低いのなら、
買う意味が無いということなのでしょう。確かに後で、千円をそのシャン
パンに足しても味が良くなる訳ではないですから・・・。貧乏人で安物買
いばかりしていた当時の私には、ちょっと驚きでした。「安くしてくれる
んなら、有り難くそれを買えばいいのになぁー」と心の中で思い、その方
のお考えが、理解できませんでした。

でも今では、その方の仰った事や意味が分かるような気がします。安さの
代わりに失う品質があるとすれば、それを買う価値があるとは思えません。


(2)「安いだけが売り」っていいことか?

つまり、世の中にはいろいろな考えのお客様がいらっしゃるということな
んです。たとえ口に入れる食品といえども、おいしさや安全性や見た目の
美しさなどより、とにかく安いのが一番と思う方や、多少高くても、また
たとえ送料がかかっても、いいものを手に入れたいと思う方などなど。
また、同じ人間でも時と場合で、判断のものさしも変わります。人にあげ
るのは良い物を。でも、自分用には、安いものを。(その逆の方もおられ
ます。)

そこで、過去の自分達を考えた時に、こんなことがありました。

チーズマーケット開店当時、安売りをするとその時は来客も多くなるので
すが、そのセールを止めると、売り上げが激減しました。以前はまずは来
てもらい、「この値段なのにこの高品質。」と分かってもらおうとしてや
った安売りなんですが、結果は期待したのとは全くの逆でした。

つまり、安売りするとそれに興味をもたれる方が多く集まるのです。(味
は二の次、安さが大事。)当たり前といえば当たりまえなのですが、こう
いうやり方では、先のシャンパンのお客様のように本当に良い物を求めて
いる方を呼べないのです。

誤解して欲しくないのですが、お客に良し悪しがあるといっているのでは
ありません。(詳しくは、(3)で述べます。)


「これぞチーズ専門店」のページでも述べましたが、チーズマーケットを
始めた頃は、「何処よりも安い」が売りでした。確かに札幌でも一番安か
ったと思います。自分の利益までもとことん削ってでも喜ばれたいだけで
した。

このうわさのお陰で、飲食店さんもずいぶんと多く得たのも事実でした。
でも、売っているチーズは日本のデパートでも見かけるチーズ(つまり、
もう既に大手輸入業者が扱っていた)がほとんどでした。出回っているチ
ーズなので、勝負することといったら、悲しいかな値段しかないんです。

これが当時の私達の実力だったのです。経験も浅い、知識も少ない、売り
方も知らない。始めたばかりだったので当然ですが、これが全てでした。

札幌東急百貨店のチーズコーナーに卸したり、中央区のど真ん中に支店も
出していたあの頃は、売り上げも勢いもありました。でも、本店以外の店
は、全てパートさん任せ。研修を積んだといっても何ぶん、短く、経験も
不足がちです。当時のスタッフはみな一所懸命に接客をしてくれました。
親切だっととお褒めの言葉も沢山頂きました。でも、長丁場(5年や10
年)で考えますと、パートさんという立場では常にいい接客が十分には出
来ないと判断しました。ナチュラルチーズの販売に責任のとれないパート
さんを使うことはできないと。チーズマーケットの常連さんは、交通の便
が良くても支店には来てくれません。美奈子を求めて、遠い新琴似の本店
まで、足を運んで来て頂いていたのでした。

以来、支店は作らない事に決めました。全て私と美奈子が近くで目を配れ
る量のチーズと一つの店に絞りました。そして、わずか1年半後に、この
支店も整理しました。

安くするとそれだけ短時間にたくさん売らなければなりません。とても大
変です。大変な割りに儲かりません。また、賞味期限に追われるので、と
ても神経を使い、大量に輸入するので、売れ残りも出てきます。扱い量が
増えると手をかけてあげられない、目が行き届かないチーズも、ちらほら
出てきます。

当然劣化したチーズも売ってしまうことになります。(悪気はないのです
が。)また安くするのではなく、安くしないといけない状態も生まれまし
た。先の話の通り、消費期限が近づくことです。もちろん、期限が過ぎて
も美味しいのですが、期限を過ぎると売れませんし、短いと(あと5、6
日)、売るにはもう遅すぎます。捨てるよりはということで、卸売りの業
界では、半値以下になるのが当たり前になるのです。(もちろん大赤字。)

だから安いからっといって、こうしたチーズを買っても、手厚い管理はさ
れていないと思った方がいいのです。ただ安いだけなのです。だから、そ
れがハズレの品質であることも多いと思います。そうしたチーズを手放し
た卸業者もそれを買って小売しようとする業者も、お互いに事情は知って
いるのです。だから、「おいしいよ」ではなく、「安いよ。」となるので
す。買う側も安いので、多少不味くても諦めて文句も云えないのです。安
く買ったという負い目?があるので、諦めざるを得ないのです。

  今の私達は、こうした悪循環な売り方がとても嫌なのです。こんな商売は
もう何年も前に卒業しました。


輸入チーズの場合、とても長い距離を移動するので、その途中途中でどん
な人が、どのように取り扱ったかどうかが一番そのチーズの品質を左右す
る重要な点なのです。(時には、ミルクの質以上に。)だから、味の事を
言わないで、「チーズが安い。」や「激安・・・」なんて平気でいう店自
体、今の私なら信用できないと思います。チーズの管理状態がいいなんて、
有り得ないのです。安く売るには人手は掛けられません。人件費が足かせ
になるからです。だから、大量に安く仕入れて、そのまま何も手を掛けな
いで売る、「箱物チーズ」しか扱わないのです。運賃が安い船便を使う事
が当たり前なんです。安く売るには、仕方のないことなんです。

でも、食べ物なのに美味しさを置き去りにしたこうしたやり方が、例えば
「青かびチーズは、塩辛いだけでちっとも美味しくない。」とか「やぎの
チーズはクセがある。」なんていう誤解した消費者を日本で数多く生んで
しまった張本人なんだと思います。大手の輸入業者や流通業者にはすこし
は、反省して欲しいと思います。

私の経験から言えることは、「安くて状態もいい輸入チーズ」なんて存在
しないのです。


まして注文後にホールからたった100gを切り出して売るなんて、とてもコ
ストが上がって彼らには出来ないのです。(例えば;500円のブリーを100g
のカット・包装・片付けをするのにパートさんを使えば、5分はかかります。
すると、(5分/60分*700円時給=58円の人件費)他に、包装紙やラベル代、
水道代 etc)でも、箱物チーズなら売るときにカットを必要としません。
そのまま売るだけですから、安く出来ても不思議ではありません。でも、
私の経験でも管理の悪い小ぶりの箱物チーズに美味しいものはないと思います。


また、カットチーズでも機械で30カットぐらいを一度に出来れば、人件
費は下がります。つまり「切り置き販売」です。これなら大手も手を出し
ます。でも、その見返りに品質は、必ず落ちます。これは、回転寿司とそ
の場で握ってくれる寿司とでは、「同じ寿司」でも、味と値段に大きな開
きがあるのに似ています。しかしカットチーズの場合、味は大きく違いま
すが、値段に大きな差はありません。この約60円が高いと感じるお客様
なのか、質のいいチーズを買う為には必要な60円だと思われるかで、ど
の店のチーズを買うのかが決まるのだと思います。

だから、輸入業者の使命は、低コストことばかり追うのではなく、いかに
現地の味を忠実に再現できるか?に狙いを絞り、その方法を確立し、実行
に移し、そうした誤解してしまった消費者を無くすようにおいしいチーズ
の試食活動などをすべきだと思います。

(3)「全ての客を満足させることは、どんな店でも不可能。」

とうとう中央区の支店を整理しました。大手に出来なくて、個人店で出来
ることを必死で考えました。

大量生産のローコストチーズよりも、生産量がとても少ないチーズや季節
ごとにしか生産されないような旬のチーズなどをヨーロッパ各地の見本市
に行き探しました。まだまだ、日本の大手輸入業者が手をつけていないチ
ーズがたくさんありました。こうして、今ではパリのランジス市場のチー
ズを中心に取り扱っているのです。

ふと頭の中に、あのシャンパンのお客様の言葉が浮かびました。いつも、
赤札(低価格)を売り物する売り方に疑問を持たれる方は、ここ札幌はも
ちろん、全国にはもっと数多くいらっしゃるのではないか?と。なるほど、
一時多かった酒のディスカウンターも淘汰され、あまり見かけなくなりま
した。消費者の中にも、おいしさ重視の考えをもつ方が増えてきたのだと
思います。

このネット店を通して、全国のお客様とお話できるようになり、「自分の
町にはいいチーズが売っていないから、普段は近くのデパートなどで、あ
る程度の質のチーズを買っている。」という声が結構ありました。そうい
ったお客様には、特に何度もご注文を頂いております。

つまり、チーズマーケットの客層をぐっと絞り込んだのでした。お客様に
良し悪しがあるではなく、こうしたランジスのチーズを扱うチーズマーケ
ットの存在価値が分かる顧客に絞り込もうとしたのです。その為には、私
達はお客様が買われたチーズが必ずおいしいことを約束できる体制を作り
ました。価格は初期の頃より、すこし(60円? ^^)高くなりましたが、
品質は、おつりがくるほどに高めました。気に入らない味になったチーズ
は、安くして売ることも止め、全て廃棄しました。

皆様が買う時のチーズは、こうして私達がさらにふるいにかけて残った良
いものばかりなので、ハズレがないのです。

値段が一番と思われる方には、量販店に行ってもらっても仕方がないと腹
を決めました。全てのお客様を満足させる或いは、全てのお客様を取り込
もうとすること自体、愚かなことだと悟ったのです。それは何も私達ばか
りでなく、デパートでさえも無理な事なのです。

それぞれの店がそれぞれに応じた客層と客数に絞って(対象になる顧客を
想定して)、アピールして商売をしているのだと思います。

では、小さな店が優れていることは何か?そうです、細やかなサービスと
フレンドリーさ。パートさんではなく、いつも同じスタッフが対応するこ
とで、そのお客様が過去に何を買われたのか、どういう風味が好きな方か
を記憶している専属のスタッフがいることです。そして、相談に乗れるこ
とです。


(4)値段よりも試食できる店を。

今、私達が積極的に取り組んでいるのは、できる限りご来店のお客様に
たくさんのチーズを試食をして頂こうということです。実は先の話の通
り、安売りをしていた頃は、余り試食を出していませんでした。言うな
れば、安く売っているんだから、他のことはちょっとぐらい我慢しても
らってもいいか?という気持ちがあったのだと思います。それぐらい、
安くしていました。売る側も安く売ることで、こうしたほかの事は目を
つぶってほしいという甘えが生まれてくるのも事実です。(品質や形や
色や賞味期限の短さなどで。)

でも、私達も海外のいろいろな国に行き、チーズを売っている店を何軒と
なく見て回りますが、そのほとんどは試食をさせてくれません。

旅先なので、どれもこれもたくさんは買えない。でも、味を見たいし。売
り方は日本のように100gでは売ってくれません。1/4とか半分ぐらいなん
です。それがおいしければ、安心していくらでも買いますが、チーズ専門
店を経営している私達ですら、味を想像出来ないようなチーズに出会うこ
ともあります。そうした時、思ったのです。いくら私達が口で説明しても
本当にその味を理解してもらうには、「試食しかない」という結論を。

大げさな話ですが、これが最もお客様が望んでいることなのです。ただ、
安いことよりも、自分好みの味だと分かる試食が出来るのが、一番のサー
ビスだと思います。

ネットのお客様には味見をしてもらえませんが、直近の店頭での売れ具合
をいち早くお知らせして、何が今特にお勧めなのかという情報を逐一更新
しています。また、私達が毎日味を見て、いい状態のものしか売りません
ので、何度も安心してお買い物をされている方が急増したのだと思います。

今こうして、値段よりも入手困難な季節のチーズ、少量生産のチーズ、そ
して何より常にいい状態のチーズを扱うようになり、あのシャンパンのお
客様のような常連のお客様をたくさん持つことができました。とても、う
れしい毎日です。

最後にチーズマーケットのモンドール2,875円(税込み;500g)は、今年の
冬もたくさん売れました。ありがとうございます。多分、ネットでは日本
で3本の指に入る安さだったと思います。でも、私達は安いことをあえて
強くは云いませんでした。「激安ぅー。」とか「通常価格?の30%引き」
とか怪しいコピーは使いませんでした。先の苦い経験があったからです。
安さよりも、もっと大切なものがありますし、消費者の方にアピールした
いことが、値段以外にも、たくさんあるからなのです。
チーズマーケットで最優先されるものは、”おいしさ”です。

いつも、「常連さまを大切にしたい。」「常連さまになってもらえるよう
な接客を心掛けたい。」これが今のチーズマーケットのモットーなのです。

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メルマガ32号(安いチーズ・安売りチーズはお得か?)