| TOP |  お買い物方法 |  ワインの話 | チーズの話 |

「チーズの味は毎回違う」これはチーズの理解への第一歩



チーズマーケットを興して、私たちが日本の消費者の方に三番目に伝えたいこと・・・それは、

「ナチュラルチーズの味は毎回違って当たり前。」ということです。

(ナチュラルチーズなので加熱殺菌されたプロセスチーズとは違い味が常に変わり続けます。)

 

 

年で一回程ですが地方発送した(数回買って頂いている)お客様から、「今回のチーズは、前と味が違うんですが。」という問い合わせを頂く事があります。こういう問い合わせは、「前に届けた時の方が美味しかった。」とおっしゃっているのだと思います。

 

こんな時、私たちチーズマーケットでは、こうお答えしております。「もう少し冷蔵庫で寝かせていただくと風味が徐々に増して来ますので、4、5日ほど経ってからご賞味下さい。」と。つまり、現在のチーズマーケットではとても回転がいいので、売れ残る事がほとんどありません。逆に新し目のチーズを常にお届けしております。時折運良く?(或いは運悪く?)ちょうど味のピーク(ベストの味)の時にお届け致しますと、もうその味が忘れられないようで今回のチーズの味は、以前のものに比べて味が落ちると感じてしまうようです。

 

 

上の3枚の写真をご覧下さい。左から右に順に日数が経っている順に並んでいます。先の例では、例えば真ん中のような状態のラミデュ・シャンベルタンを1回目にお送りしてその後、2回目に左にあるような若いチーズをお送りしてそれをすぐに食べられたとすれば、当然味は違いますし、1回目の真ん中のチーズのようなおいしいチーズにはまだ成りきっていません。こうしたことが、そのお客様が納得いかなかった一つの原因を考えられます。

 

チーズマーケットが実行している事は、全てのお客様がご注文された全てのチーズを美味しい内に食べ切れる時間的余裕があるようにと考えて、なるべく若めのチーズをお送りしています。(早熟ということではありません。)上の写真では、左端のチーズから中央のチーズの幅のある状態の中から各お客様に合うチーズを選んでいるのです。(間違っても右端のような状態の悪いチーズをお送りする事はありません。)例えば、こんな注文が一度に入ったとします。A様は10種類のチーズをオーダーされ、B様は2個のチーズをオーダーされたとします。お客様から特に熟成度合いの指定が無い場合には、チーズマーケットではA様に若めのチーズを、そしてB様には中央のチーズに近いものをお送りしています。それはA様は全てのチーズを食べ切るのに種類が多くて長い期間を必要とすると考えるからです。

 

さて、それではなぜ、ナチュラルチーズが毎回違う味なのかといえば、それはチーズの中の乳酸菌を初めとするいろいろな菌が元気に生きており、醗酵が毎日進んでいるからです。それ以外にもいろいろな原因があります。

1.こちらからお送りする時点でチーズの熟成期間が違うから。

2.季節によりミルクの成分が違うから。

3.同じ名のチーズでも、別メーカー製の場合があるから。

4.同じメーカーの同じ名のチーズでも、無殺菌乳製と殺菌乳製の場合があるから。



また、「チーズのおいしさ」を考えるときにその考え方一つで、同じチーズを食べても感じ方が違ってくると思います。例えば、もしそのチーズのおいしさをある一点だけに絞り切るような考え方の人がいれば、その人がこの先納得のいく味のチーズに出会う確率はほとんど無いと思います。そのチーズが持つおいしさをその一点だけに絞り切るの考えではなく、おいしさを「ある長さをもった線」で考えた方がいいのではと思います。この考え方のほうがチーズをより理解できる柔軟性をもった考え方だと私は思います。美味しさを一点だけではなく、ある幅を持った線で考え、美味しさにはいろいろな段階があるのだと認識していれば、更に云えば「チーズは味が毎回違って当たり前だ」という認識をもっていれば、もし自分がイメージを持っていた味と違った時があっても、落ち込むことが無くなります。むしろ逆にどうして前の時と違う味なんだろうかと積極的に考えるようになります。私たちが皆様全てにお届けするチーズは、どれも皆同じ味ではあり得ません。ちょっとおいしい→おいしい→よりおいしい→最もおいしいという連続した「おいしい線」の中から、のぼり調子であるいい状態のチーズを選んでお届けすることしか出来ませんし、そうした観点で皆様に代わってそうしたチーズをお選びすることが、私たちの使命だと思っています。

 

もう一度云います。味が絶えず変化する食品、それがナチュラルチーズなのです。実は当たり前な話なんですが、ほとんどの食べ物は時間と共に味が変わっていきます。リンゴやみかんなどのフルーツも、夏場のトマトと冬のハウストマト。チーズやワインそして納豆など発酵食品は、絶えず味が変化するからこそ奥深く、時折あっと驚くような美味しさに出会ってすごく感動するひと時を我々に与えてくれるのだと思います。いつどこで食べても同じ味という食品は、インスタント食品や缶詰め、レトルト物などいわゆる人工的な味付けをされた加工食品がほとんどなのです。(こうしたものが日本には溢れています。)私はいつでも同じ味がするというのは、いいようでとても悪い、いや恐い気がしています。つまり、自然の恵みそのままに近い形の食品であればあるほど、野趣に溢れ、味が常に違う食べ物だということなんだと思います。

 

それでも、どうしても納得いくチーズの買い方をしたい。そんな方には、チーズマーケットの店頭でのご試食をどんどんされるのが最も良い方法だと思います。何事も経験の積み重ねが大切です。私たちは、時には同じチーズを三週間に渡って食べて頂くこともしています。すると毎週来られているお客様の中には、同じチーズなのに全然味わいが違うことに驚かれ、その中で自分が好きな状態がおいしい線上のどの位置(どれ位の若さであるか)にある時なのかが自然と身についていらっしゃるようです。いろいろな若さのチーズを味わう経験を積むことで、徐々に自分の舌に合う最良のチーズを選べるようになるのだと思います。また、毎度の食事を大切にして、テーブルに並んだ食品についてよく考え、意識して味わう経験を積むことで、チーズに限らず良質な食品を見分ける舌を育てていくのだと思います。(おしまい)



「チーズの味は毎回違う」これはチーズの理解への第一歩