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メルマガ27号(コンテ30ヶ月のチーズが一番か?)
--------------Cheesemarket.jp mail news 2003 vol.27-------------
☆☆☆札幌チーズマーケットからのメールマガジン☆☆☆
http://www.cheesemarket.jp
-------------目次-------------
1)コンテ 30ヶ月が一番おいしいのか?
----------------------------2004/4/4----------------------------
こんにちは。いよいよ4月ですね。4月4日は父の命日。私は父よりも
長生きできました。若い頃(29歳)に胃癌で死んだ父の分も長生きで
きるようにチーズを中心にバランスのいい食事を心掛けています。
毎日を美味しく楽しく充実した労働と睡眠と快便で過ごすのが願いです。
さて、今回は次の1本です。
1)コンテ 30ヶ月が一番おいしいのか?
能書きは置いといて目の前にあるおいしいチーズを静かに楽しむのが私流。
しかしこの浮世には、知ったかぶりをして吹聴する人もいるようで間違っ
たことを信じてしまう人たちを思うと可哀想で筆を執りました。
今宵は、チーズにまつわるうわさをバッサリ斬りたいと思います。
何かのお役に立てればとてもうれしいです。
-----------1)コンテ 30ヶ月が一番おいしいのか?------------
ちょっとあきれた話題で恐縮です。
今回は、ピーコ以上に辛口で迫ります。
似たようなことで、「パルミジャーノ30ヶ月は輸入しないのですか?」
とか、はたまた「パルミジャーノ48ヶ月が美味しかった。」なんて、
いろいろな奇怪な話を日本では耳にすることがあります。
7年前、私が札幌でチーズの輸入を始めた頃、オールドミモレットも今
より全然出回っておりませんでした。6ヶ月や12ヶ月が大半のその当
時、飲食店などでそれを食べたある方が、「18ヶ月ものがおいしいか
ったから是非輸入して欲しい。」と云われました。ふーん、そんなもの
もあるのかぐらいに思いました。
しかし今や、エスカレートして、やれ24ヶ月だの30ヶ月だのとより
年老いた?じーさんミモレットを祭りあげる様な話が出回っているでは
ありませんか。
はっきり云いまして、これらは余りにも短絡的な話だと思います。
ずばり、それらは間違えています。何故なら例えば全てのメーカーのコ
ンテがどれも30ヶ月経てば、無条件で美味しくなるかというとそうで
はないからです。ミルクの質も違えば、技術も違う。作る場所も違えば、
作った時期も違う。・・・なのでどれ一つとっても同じコンテはないからです。
だからそれぞれのコンテは、美味しさのピークのグラフが違うのです。
あるコンテは、ピークが20ヶ月であったり、14ヶ月であったり。だ
から当然12ヶ月のコンテが20ヶ月のコンテよりも美味しいことはあ
りえます。長ければ良いというものではないのです。
こういうことを平気で云う人は、これまでに一体どれだけ多くの生産者の
コンテを、どれだけ多くの熟成段階が違うコンテを食べ比べた経験がある
のでしょうか? また、実際に現地フランスへ行き、作っている所を見て
きたと言うのでしょうか?
先日、ランジス市場のチーズの担当の方に失礼ながら、同じ質問をぶつ
けてみましたが、見事に笑われました。(無謀な行為で怒られるかと私
は思ったので気が引けたのですが、)「むっシュ、ヤマモト。ソーンナ
コト、イチガイニ、イエルワケナイデショ。」と。・・・その通りだと
思います。つまり、ある時期に搾ったミルクから作られたコンテのその
美味しさのピークは18ヶ月だったり、今年はとても暑かったので、○
○ヶ月がピークになるだろうかと、実際にチーズに一定期間毎にテスタ
という道具でチーズを刺して穴をあけ、チーズの硬さや色、香りを確か
めて、時には味見をしながら、今後の熟成していく様子を予測して、い
いタイミングで出荷しているのだそうです。
こうしたことはワインでも云えます。○○年ものがいいなんていいまし
ても、その国やその地域の全てのワインメーカーの全てのワインが良い
ことを保障しているものではありません。あくまで目安程度のことなん
です。そんなアバウトな情報だけを鵜呑みにして、割り高のワインを買
うのは、お金がもったいないと思います。
長く熟成させられない、いわゆる”早飲みワイン”をいつまでも部屋に
寝かせていても美味しくならないのと同じで、同じコンテチーズといい
ましても大手のものから小さい工場で作られるものまで実にいろいろあ
るのです。こうした事情を踏まえていれば、決してこんなことを吹聴し
たり、それを真に受けるのはどうかと思います。
実際、チーズマーケットで輸入しているコンテが一体何ヶ月熟成のもの
なのかをいつも把握しているわけではありません。それはラベルには書
いていないからです。書いていないというのは、ずばりそんな事不要だ
からだと思います。少なくともフランス人はそんな事をいちいち気にし
て買ったり食べているわけではないのです。こんなしょうもないことを
話題にするのは、ひょっとして日本人だけかもしれません。大事なこと
は、自分の目に前にあるこのチーズがうまいかどうかだけなのです。
食べ物にそれを差し置いて、一体何が重要なんででしょうか? どこど
こ産だの、何ヶ月経ってるだの、・・・・、どうでも良いことなんです。
まず、食べてみて美味しいと思えば、人はどうしてなんだろうかとその
チーズに興味を抱きます。それからそのチーズの事をもっと知りたくな
り、先にあげた内容のことも知りたくなるのだと思います。
調べてみたら、たまたま24ヶ月だったり、30ヶ月だったりしただけの
ことなんです。
「30ヶ月が優れていて、それより短い期間のコンテは皆劣っている。」
そんな事はないと、お分かりいただけたでしょうか?
その方が30ヶ月のコンテを食べて美味しかったのは、30ヶ月だから
というだけの理由ではないのです。月日も含め、いろいろな要因が重な
り合っておいしいという結果になったに過ぎません。いくら30ヶ月で
も管理が悪ければ意味が無いのです。
チーズやワインを選ぶときには、こうした、”○=○のような方程式的
な言葉”(例;○○ヶ月=おいしい)よりも、実際にその中身を試すの
がずっと堅実な買い物方法だと私は思います。「実物に勝るものなし。」
です。いくらきれいな文章や入れ物やデザインで飾っても、自分がおいし
いと感じるかどうかは、自分の舌が決めることです。なので試食が出来る
店ならば、進んでした方が後々その経験が生きてきていいと思います。
そういう意味でも、チーズマーケットの店頭に来られるお客様には有無
も言わせず、どんどん試食してもらっています。私がどうしたこうした
と、しょうもないことを云うよりも、まずいろいろと食べて頂き、美味
しいことを知ってもらえたら、それでいいと思っています。
あとで何か聞かれたら、答えるぐらいでいいのではないでしょうか。
でも私はこれからは、このメルマガを書いた後はもう、こうしたしょう
もない類の話には、一切耳を貸さないこととします。能書きよりもうま
いかどうかにどんどん集中していきたいと思います。そして、なぜこれ
は美味しいのかをいつでも分析して、説明できるようになりたいと思います。
その為に、これからも仕事を休んで生産者を訪ねたいと思います。^^)
売る側の店(小売店や飲食店など)が、もしこうしたこと(○ヶ月)をこと
さら前面に打ち出すような姿勢ならば、そこには遠ざかった方がいいと思います。
なぜなら、うわべだけ他店との違いを打ち出すために、こうした月表示
をしたり、ありがたがらせているいるんじゃないかと思うからです。そ
うして差別化を図れば、高い値段を付けられる。「高いとうまい」、或
いは「高いと貴重」と勘違いする消費者もいるからなんだと思います。
「信用できるのは、値段の高低だけ。」こんな考えでは、売り手に簡単
やられてしまいます。
我々消費者もこうしたイメージコピーには、気を付けないといけません。
消費者も常に売り手の言うことを一度落ち着いて考えてから判断しないと
いけません。そのためには信頼できる独自の筋を持っている事が大切です。
消費者は、ラベルに「30ヶ月」と書いてある事を購入の判断材料にす
るのではなく、あくまで実物の味を見ることです。仮にそのコンテが
なーんと真空包装されているような店でしたら、何をかいわんや。その
品質は全く期待できません。「30ヶ月」とかいった輸入者すら分からな
いあいまい情報を平気で表示する店の姿勢が見えてきます。それよりも
「冷蔵・空輸品」と表示されているチーズの方がよほど、味は期待できる
と思います。
つまり、その食品が最終的にいいものかどうかを見極める最大のポイン
トは、それを売る人間の取り組む姿勢だと思います。
ここ数年来、ニュースで取り上げられている食品関係の問題も、結局は担当
者のモラルの低さや社風(例;安全より
利益を最重視
)が招いたものだと感
じています。
問題を起こした後で、会社の名前を変えたり、デザインを変えたり、人気の
芸能人や歌手をCMに起用して、イメージだけを変えても、また同じ人間や
元社員が担当するなら、肝心な所は何も変革されないで、前となんら変わら
ない製品を生産すると思います。 食中毒を出したすし屋は、また同じ過ち
を繰り返すのと似ています。
しかし、我々日本人の消費者は、こうした企業のやってきたことをすぐに忘
れてしまいがちかも知れません。我々の厳しい目がないと、こうした一連の
不祥事が繰り返されると思います。
食品は、だれが扱うかで、またそのモラルの高低で、その品質は大きく変わ
ってしまうのだと思います。まして、輸入されたナチュラルチーズの場合は
特にそういえます。現地生産者の姿勢、ミルクの質、季節、製法、輸入方法、
国内の輸送手段と方法、売場担当者の経験、熟練度、陳列方法、作業の迅速
さ、温度や湿度の管理、包装方法、
売らずに廃棄する勇気、
etc。このように
いろいろな要因が複雑に絡み合って、最終的な味が決まるナチュラルチーズに
おいて、単に○○ヶ月だけを話題にする事がいかに意味のないことなのかが、
お分かりいただけると思います。
私は、消費者からそうした信頼を得られる人間として認められる様に、買う
側の論理に立って考え、売る側としては言いにくいことも、すっきり言える
店主になりたいと思います。
最後は、なんだか「二十歳の決意」のようになってしまいました。
ご静聴、ありがとうございました。
メルマガ27号(コンテ30ヶ月のチーズが一番か?)