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メルマガ22号(よりよいチーズの保存方法)


--------------Cheesemarket.jp mail news 2004 vol.22-------------

☆☆☆札幌チーズマーケットからのメールマガジン☆☆☆
http://www.cheesemarket.jp

-------------目次-------------
1)よりよいチーズの保存方法
(1)チーズはこう包まれてユーロからやって来る。
(2)家庭での上手なチーズの保存方法は?

-----------------------2004/9/14(校正版)----------------------

(1)チーズはこう包まれてユーロからやって来る。

実は輸入時にラップ包装されてやってくるチーズは、一つもありません。
次の写真をご覧下さい。

1.白カビや軽いウオッシュは、フィルムと紙の二重構造の包装紙が多い
です。また、それほどぴっちりと包まれていません。

ペッパーブリー(白カビのチーズ)
  図1(全体) 
  図2(フィルムのアップ) 

マンステール(重いウオッシュ)
  図3(全体)
  図3−1(フィルムのアップ)

2.ロッシュバロン(青カビ)などは、二重のフィルムになった包装紙で、
所々に小さい穴があります。

  図4(全体) 
  図5 (見ずらいですが、赤丸の部分が穴です。) 

3.青カビは、アルミホイルに包まれます。

  図6(フルムダンベールの包装)   図7(フルムダンベールの包装を剥いたところ) 

4.ハードチーズは裸のまま紙の箱に入れられ、または紙で簡単に包まれ
ているだけなのです。

  図8(モンタジオ)
  図9(モンタジオ)

このように元々出荷時には、ラップなるものが全く使用されていないの
です。では、どうして私をはじめ多くの人が、「チーズの保存にはラッ
プを」と云うかと申しますと、どの家庭にも広く普及した台所用品だか
らです。なので本来ならばチーズペーパーをお勧めしたいところですが、
今回はラップでの包装を考えてみます。

しかし、こうしたチーズメーカーで使われている包装紙と家庭のラップ
の一番の違いは、通気性の有無です。ラップは、ほぼ完全に通気しませ
ん。乾燥を防ぐにはこれほどいい材質はありませんが、チーズに関して
いえば、これでは不都合なのです。

また別の例を挙げましょう。
青カビチーズ、ロックフォールがどのように輸入されているかを実際の
写真でどうぞ。

1.まず、このように箱単位で輸入します。

  図10 

2.ロックフォールなどは水分が多い青カビチーズで、中から水分がしみ
出してくるので、ダンボールの下は、濡れています。このまま放ってお
くと蒸れてしまい、異臭が出たり、正常な熟成が進みません。輸入後、
すぐにお手当てをしてあげることが大切です。

  図11(ロックフォールの箱を開くと) 
  図12(赤丸の部分が濡れている)
  図13 (ロックフォールの水分をペーパーで取り除きます)

3.ロックフォールの下に敷く台座を用意します。(中にペーパーを入れ、
穴の開いたふたを被せ、古いアルミホイルを取り除き、新しいホイルと
交換します。

  図14(ロックフォールの台座を用意) 
  図14−1(新しいアルミホイルで包みます) 

輸入した次の日などにこうしたことを一気に行います。(なので、店舗
営業は週に2日しかありませんが、平日もとても忙しいのです。


こうしたチーズを輸入してからセラーでしばらく寝かせ、味を見てうま
みが増した頃に、売り出します。もちろん、その場でその都度、ホール
からカットしてお売りしています。

つまり、これまでヨーロッパからやって来るチーズのどれを見ましても
ラップは全く登場してこないのです。

また、真空パックなんてもっての外なのです。何故なら、チーズの中か
ら出てきた水もパックされていては、行き場がなく、チーズに生えた青
カビが水に浸かってしまい窒息状態になるからです。つまり、青カビチ
ーズにとっては、とんでもなくひどい環境なんです。(しかーし、見栄
え重視で、小パックになった青カビのチーズを売っている店は日本でも
たくさんあります。)こうした青カビのチーズを食べてもおいしくなく
て当たり前なんです。
真空パック同様に、出て来た水の行き場をなくすようなラップ包装は、
チーズの保存には不向きなんです。でも、一般家庭にはラップしかない。

そこで、どうやってラップを活用してチーズを保存できるのか考えましょう。


(2)家庭での上手なチーズの保存方法は?

結論を先に述べますと、「全てのチーズをきっちりとした長時間のラ
ップ包装にしては、ダメ。」
ということなのです。

また、チーズを専門店などで買われてから、ご自宅の冷蔵庫での保管の
仕方ですが、それは”買った時のいい状態を出来るだけ保れればいい”
程度に考えて欲しいと思います。

つまり、買った時よりおいしくしようなんて思わない方がいいのです。
買った時のいい状態のうちにおいしく食べ終えるためには、どうチーズ
を扱えば良いのかという考えで臨むのがいいと思います。

なぜなら我々チーズ専門店の専用の冷蔵庫とご家庭の冷蔵庫とでは、
余りにも大きな差があるからです。例えばチーズに限らず、多種多様な
食品が入っています。納豆やキムチなどいろいろな菌や臭いがある。一
日の中での温度の上がり下がりが激しい。むらなく冷気が流れていない。
一体どれぐらいの湿度があるのかが不明。振動が多い。容積が小さい。
チーズを置く下敷きが違う。etc です。

以前、ヤギのチーズを家庭の冷蔵庫で熟成させる方法を教えてください
と一般の方からの質問を受けた事がありますが、「それは無理です。」
とはっきりお答えしました。ご存知の通りヤギのチーズは、その管理が
最も難しいのです。
まして先の理由からそれを家庭の冷蔵庫でするとなると、とても大きな
ハンディがあるからです。

では、ラップでどうすればいいのか?
「はい、タイプ別に保存方法を変える。」ということなんです。

順番に述べたいと思います。
その前に、全てのチーズに当てはまるポイントを。

A.一番いいのは、ラップ包装を小まめに交換すること。
B.温度は、可能な限り低く。(3−4度ぐらいがベスト)
C.開閉が少ない冷蔵庫。或いはチーズの回りの温度変化が少ない所。
D.匂いが強い他の食品が、そばに置かない事。

このB〜Dの観点で適当な所を探すと、冷蔵庫の中にさらに内扉がある
チルド室に大き目のチーズ専用のタッパーにふたをして保存することが
いいと考えられます。

こういう環境下で、なお直接チーズに触れる部分をどうすればいいのか
をチーズ毎に述べていきます。

@長期間のラップ包装に耐えうるチーズ;

それは、同時に真空包装をしてもOKなチーズということですが、フレ
ッシュチーズやクリームチーズなどがあてはまります。また、超硬質の
チーズです。
こうしたハードはその表皮が湿っていない乾いた感じがするので触れば
分かります。初めにパルミジャーノの表皮を指で触り覚えます。こうし
た感じの表皮をもつチーズであれば、長期間のラップ包装に耐えられま
す。

Aラップ包装に不向きのチーズ;
これはヤギのチーズです。ヤギでもハードチーズならいいのですが、柔
らかいチーズはラップをしてはいけません。お皿にのせてそのままチル
ド室へ。かけてもお皿の上からふんわりとかける程度。

  図19(良い例;ラップをふんわりかけている。)
  図20 (悪い例;ラップをきっちりかけすぎ。)

そして2日に一度ぐらい、床擦れがおこらないように下になっていた面
を別の面に変えてやります。(今まで下になっていた面の色が、他の面
と違う事が分かるかと思います。このままだと、ここからぐじゅぐじゅ
になってしまい劣化が始まります。)位置を変えることで、床擦れが防
げますし、蒸れません。嫌なにおいも発生しません。


B短期間ならラップ包装に耐えうるチーズ;

このタイプは、@とA以外のほとんどのチーズに当てはまります。白カ
ビや青カビ、ウオッシュ、セミハード、ウオッシュされたハードです。
ラップは、2日おきに換えるのがいいと思います。

「2日に一度も手入れをしなくてはならないなんてチーズって面倒くさ
い」とか「忙しくてそんなに手は掛けられない。」なんて思いません。

私もそうですが、まるで動物を飼育しているような楽しさを覚えます。
いろいろな日の状態を見るとチーズのことがだんだんと分かってきます。

「ナチュラルチーズは、だれの手に渡るかでその扱われ方の違いで、
味も良くも悪くも大きく変わってくるのです。」ともいえます。

いつか売れるか分からないに、ずっとラップ包装しっぱなしでチーズを
陳列しているような一般的な店で、白カビのブリーの芯が無くなり、
「とろとろで、食べ頃ですよー。」と勧められても、うーん、それはち
ょっと違うんじゃない?と今ははっきり言えます。

食品の世界で、あまり手軽・便利、早いなどの能率ばかりを追って販売
すると、一番大事な安全性や味が後回しにされてしまうと思います。

「何でもとろとろになれば、おいしい」という訳ではなく、今までどう
扱って来てそうなったかの過程の管理が大事で、それで味も決まってし
まうのです。先の例では、切らずにホールのままゆっくりと寝かせて、
ある時期が来た時に、カットしたら中がとろとろだった。こうしたチー
ズなら、買っても必ずおいしいと思います。つまり、一度切ってしまい
そのあとラップで包まれていないので、蒸れたような味になっていない
からです。


最後にチーズの保存方法と乾燥についてです。

ヤギの柔らかいチーズ以外は、チーズを乾燥させないようにすることが
大事です。しかしそれしか頭に無いと先ほどのように長期間のラップ包
装をしてしまい、乾燥はOKだけど、蒸れて悪臭がでてしまったチーズ
にならないようにしてくださいね。

ことさらチーズの乾燥を怖がる事はありません。

補足ですが、チーズを食べた後、残りのチーズを冷蔵庫にしまう時には、
今までのラップではなく、その都度新しいラップにして包みなおす事も
お勧めしたいと思います。(雑菌やカビの繁殖も防げます。)

もしも、日頃からチーズを常にいろいろとストックされるようでしたら、
チーズペーパーをお勧めいたします。→  チーズペーパー


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