|  TOP  |  お買い物方法 | メルマガ |

メルマガ11号(チーズのラベルの読み方)

                     
----------------Cheesemarket.jp mail news 2003 vol.11 -------------

☆☆☆札幌チーズマーケットからのメールマガジン☆☆☆
http://www.cheesemarket.jp

------------1)チーズラベルの向こうに見えるもの。----------------

今日は、チーズラベルを取り上げます。そうしたことから今のチーズ業界の
現状を考察したいと思います。

1)AOCを意味する表示;

チーズのラベルは、ワイン同様に個性的で色々な情報が盛り込まれています。
今回はそれらの中から4つだけご紹介します。

まず、写真を見てください。
11label.jpg これは、全てヤギのチー
ズで、サントモール・ド・トゥーレーヌです。3つのメーカーのものです。この中
で赤ペンで囲まれた図柄は、一体なにを表しているのでしょうか?

まず、先ほどの図を拡大した写真をごらんください。
sant.jpg

この図柄は、このチーズがAOCのチーズであることを示しています。この地球
儀の様なマークは、現在フランスで認定されているAOCチーズには、必ず
表示されています。
11Crottin.jpg をご覧下さい。これは、
クロタンというチーズですが、やっぱりこのマークが右側にありますね。

では、この2つのマークの違いはどこですか?
次の拡大図を見比べてお考え下さい。
サントモール・ド・トゥーレーヌ と クロタン・ド・シャビニョール

そうです。赤道辺りには、" APPELATION D'ORIGINE CONTROLLE " の表示があ
ります。これがAOCのもともとの意味です。このチーズの原産地が統制さ
れていて、決まった地域で、決まったミルクで、製法で、認められたメーカ
ーのところで作られている事を指します。しかし別にこれが付いているから
といって、特別美味しいわけではありません。製法を国が管理して守ること
で、本来の味を時代を超えて守っていくのが狙いです。現在40種類ほどの
チーズがこれに当てはまります。

おっと、余談が長くなりましたが、そうです。違いは、それぞれのチーズの
名前が、北極側と南極側に分けて書かれているのです。

左の図 は、SAINT MAURE DE TOURAINE と
いうチーズですし、右の図は、
CROTTIN DE CHAVIGNOL というチーズを表わしています。

このラベルの中央に、au lait cru とあるのは、このチーズが無殺菌乳で作
られていることを指しています。殺菌乳よりは、ミルクの風味がチーズに残
っていて、いいとよく言われています。これは、私もそうだと思います。日
本では、無殺菌乳でのチーズの製造は、認められていません。


2)製造者は、いったい誰?

次にsel3.jpgをご覧下さい。この
オーヴァルの形のマークは、このチーズを製造したメーカーの工場番号を表
しています。(F41.139.01)一工場につき、一つの番号です。上部に書かれた”F”は、
フランスのエフなんです。という事は?・・・、勘のいい皆様なら、もうお分
かりだと思いますが、イタリアならここが、”I”(アイ)となっています。

なので、このオーヴァルの一番上に書かれているイニシャルをみると原産国
が分かるのです。皆さんも色々と探してみてください。面白いですよ。

また、CEEは、時には、EECと書かれていたりするのですが、これはユ
ーロ圏で共通の認証工場の表示であることを示しています。このマークは、
チーズに限らず、生ハムや肉、瓶もののアンチョビなんかにも表示されてい
ます。このCEEナンバーのないチーズは、日本には輸入できません。


3)農家で作られたチーズ?

次にsel2.jpgをご覧下さい。この
”Fermier ”という表示ですが、これは、このチーズが農家(英語風に言え
ば、ファーマー)で作られたことを意味します。これもまた、農家だから美
味しいとは、限りませんし、何か特別の価値があるものでもありません。

何故なら農家製といっても会社組織になっている大規模なメーカーもありま
すし、数人の家族経営のところもあります。どちらも牛などを飼育をして、
ミルクを自分達で生産してチーズを作っていますが、中には日本にまで、流
通させられるほど大量のチーズを生産している農家もあります。でもそれっ
てふつうの規模の農家だと思いますか? 違いますよね。言葉のイメージだ
けで、あじいちゃんとおばあちゃんが作っている様な素朴なチーズだと思う
のは、早合点なんです。

AOCのチーズであっても、無殺菌乳でも、農家製でも、日本で食べる限り
は、一体どういう方法で日本まで運ばれてきたのかが全てなんです。伯爵○
○家のチーズとか、××熟成士のチーズなんて云うひまがあったら、もっと
輸送にお金をかけたケアー万全の方法で輸送しなさーい。ということなんで
す。せっかくのチーズでも管理が悪ければ、生ゴミ同然になってしまいます。

チーズを売るときには、そうした空気みたいな言葉よりも、何といっても試
食してもらうのが、一番買う側にとって分かりやすいと思います。店頭では、
毎日実践しています。(ネット販売の場合はそれが出来ませんが、出す前に
私が代わりに食べて、いい状態のものをお送りしています。)

(この農家製の意味については、今月にフランスへ来ますので、いろいろと
確認して来ますので、後日お知らせします。)

これ以外の場所で作られるチーズでは、Laitier(レティエ;チーズ工場)と
呼ばれています。このレティエもラベルに表示されている事もあります。

4)チーズのコンテスト

次に、sel4.jpg をご覧下さい。

これは、毎年パリなどで行われるフランスのチーズのコンテストで、日本で
いう農水省がらみの物です。その他にもいろいろな団体の主催でコンテスト
が開かれています。それで受賞した時のチーズのシールがこれです。この写
真は、D'OR となっているので、金賞です。他にも銀や銅もあります。これま
たしつこいようですが、付いているからって、うまいとは限りません。本当
にそうなんです。

ワインでもこのシールを貼ってあるものもあります。でも私の今までの経験
からこうした賞の結果と味は全然一致しません。見知らぬ町で、頼れるもの
がおらず、自分でワインやチーズを買わなければならない。でも何を買った
らいいのか?そして余り外したくもない。こんな時に見る程度だと思います。
決して美味しいものにあたる訳ではありません。

では、何故コンクールの賞の評価と味が一致しないのか?

理由はいろいろとあります。まずワインと違いチーズは、品質管理状態が、
原材料のミルクの質より、ものをいいます。いくらいいチーズを作ってもそ
れを置いている小売店の管理が悪ければ、全てが水の泡です。まして、日本
にまで輸入される際の注意が悪かったら、・・・。メルマガ10号と同じこ
とです。

また、こうしたコンクールは、もちろんただで出品できません。かなりの費
用がかかります。こうしたコンクールに出るメーカーの狙いは、ズバリ賞を
得てそれにより、より多くのチーズを市場に流通させるためですから、もと
もと生産量が少ない小さいなメーカーがあえてこんなコンクールに大金をは
たいて出品しても意味が無いんです。

そんなことしなくても、作る量に限界があり、認知されていてもう既に売り
先もほとんど決まっているような所には、何の意味も無いんです。

つまり、こうしたコンクールに出るメーカーというのは、自ずとある決まっ
た規模以上のメーカーから出るということになるんです。

私がワインやチーズの輸入を始めた駆け出しの頃は、よく相手に何か賞を貰
ったことがありますか?なんて、失礼な質問をしたことがあります。
今となっては、とても恥ずかしいことです。何人かのドイツのワインメーカ
ーの方が、”僕達はあえて出さないんだ。またもし貰ってもシールは貼らな
いんだ”と言っていた姿には、自信がみなぎっていたことを鮮明に覚えてい
ます。

でも、日本では、こうした賞があるとセールスの時には売りやすいし、何に
も知らない消費者には、インパクトがあるようです。だから私も含め、そう
いった事とは、距離を置いて本来の味にもっと注意を払っていかないといけ
ないのでは、と思います。

おいしいかどうかは、誰が決めるのでもなく、自分自身がそれぞれの舌で決
めること。(試食以外の全ての情報は、単に参考程度にしましょう。)

私達チーズマーケットでは、チーズを輸入するときには、こうした能書きよ
りも、常に美味しいかどうかを重要視しています。
(HP上でこうした表記があっても美味いかどうかの判断材料にはなりませ
ん。むしろお勧め度の☆の数が美味しさ指数になっています。)


ここでまとめますと、

1.コンテストには、必ずしも優れたチーズが出展しているとは限らないの
で、受賞したチーズでも美味いとは限らない。(それ自体、あまり意味
がない。)
2.金賞のチーズも管理が悪ければ、退場させられる様な味に変化する。
3.農家製といっても美味しいわけではない。
4.AOCといっても、美味しいわけではない。
5.こうしたことは、選択の一情報であって、大事なのは、今買おうと
しているチーズを試食して実際の味を確かめることである。
6.気に入ったチーズ(例えばマンステール)のCEEナンバーを覚えてお
くと、現地でもお目当ての同じチーズを買えるし、知らないで味の違う
別のメーカー製を買わないで済む。

こんなところでしょうか?

メルマガ11号(チーズのラベルの読み方)