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見た目が悪いマンゴーを切って見ると、美しくておいしくて安全。



あれは、以前「オーストラリアの旅と知恵のコーナー」で紹介した お店で見たマンゴーでした。下の写真のようにスーパーマーケットで売られているようなきれいなマンゴーではなくて、何かくすんだ色をしたマンゴーで、いくつもの黒いシミや斑点が皮に付いていました。

日本のスーパーだと半額処分をしているような見た目の悪いマンゴー。でも実はとても美味しかったのでした。

これまでの私だったら、決して手を伸ばすことは無かったのですが、いろいろな農家を訪ねてきた経験から、ひょっとしてこのマンゴーは、収穫してそのままのポストハーベストをしていない安全なマンゴーなのでは?と思い直して買うことにしました。
  
それに今までの人生で100個以上のマンゴーを自分自身で皮を剥き、切りながら食べた経験から、外見は下の写真のように悪いけれど、中はきれいだったという事実も私の背中を押してくれました。

マンゴーに限っては、見た目が黒ずんで悪くても、中は傷んでいないことが多いです。

早速、この店の軽食コーナーで切って食べてみました。するとどうでしょうか?やっぱり、下の写真のように中はとてもきれいでした。そして、中心の種の近くの方から熟していて、いい香りもしてきます。
  
マンゴーの皮は比較的に硬くて厚みがありますので、皮の部分が黒ずんでいても、意外とその内側の実まで黒くなっていることは無いのです。このマンゴーが私にとって2008年の初マンゴーでした。

ほら、このとおり!ジューシーで甘くていい香り。3拍子揃ったマンゴーでした。

このマンゴーを食べた後で、晩御飯に飲むオレンジジュースを買いにスーパーマーケットに行きました。その時に今日私が食べた様な色艶の良くないマンゴーが売られているか確かめましたが、やっぱりどのマンゴーもとてもきれいで、こんな見た目の悪いマンゴーは並んでいませんでした。

このお店で買った果物。シュガーバナナなど日本では見かけない品種もありました。

この瞬間、私の頭が動きました。そうなんです、前回(22話)でお話した「ポストハーベストの処理をしたマンゴーが店頭に並んでいるんだ。」と予想出来ました。「NON SPRAY」という表示もないので、ほぼ間違いないと思います。私が10日ほど車で連れ歩いたNON SPRAYのマンゴーは、買って2日後には表皮に小さな黒い斑点や黒シミが出てきました。それらは日に日に広がって大きな黒いシミになっていきました。そうした小さなシミすらここの店のマンゴーには出ていなかったのです。
  
日本に限らず食品がいろいろな人や会社を経由して消費者に届くといった長い流通経路に乗ってしまうと、全体を通して一番に重視する点は、マンゴーの美味しさや安全性ではないことが、徐々に分かって来ました。生産者も卸売り業者もそしてスーパーマーケットの様な小売業者も思いは一つ! そうです、「売れるまで品質が落ちないこと!」つまり、「長持ちする。」ことが一番の関心事なんです。ロスを出さずに売り切ること。残念ながら、最後にこのマンゴーを口にする人の健康など気にすること人はいないのかもしれません。いやいないと思っていたほうが確かかもしれません。
  
近頃では、消費者も生鮮食料品に対してすら、「長持ちする」ことを求めているようです。そういう消費者が増えれば、あるいはそういう人が大勢を占める社会がある限り、ポストハーベストは無くならないと思いました。やっぱり、一人ひとりが地域に根ざした商売をしていて信頼出来る生産者や販売業者を探して、そういう人達から買わないと、足元をすくわれるのが残念ながら今の世の中のようです。とほほ・・・。
  
「見た目が美しいフルーツは、新鮮だとは限らない。傷まない仕掛けがあるかもしれない。」これが私がオーストラリアに3年連続で行って、いろいろな農産物の生産現場を見て来た自分なりの一つの結論です。農薬を全て否定するわけではありません。しかし、少なくて済む方が良いに決まっています。でも、その為には、生産者ばかりに責任を負わせるのではいけないとも私は考えています。つまり、生産者の地元の町でその作物がもっと多く消費されれば、輸出することも都会の市場に流れることも少なくなり、その結果長持ちさせる必要がなくなるので、ポストハーベストも減ると思います。都市に人が流れていくことに歯止めを掛けなければ、こうした問題の根本的解決にはならないと思います。世の中を良くするのも悪くするのもやっぱり政治でしょう。


フルーツを出荷する前に行うポストハーベストの現場!輸入フルーツ等多くの食品に防腐剤や防カビ剤をかけます。