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フランスのめんどりを育てる農家と日本の鶏卵農家(鶏肉の生産現場)



4月(2007)のフランス訪問で、にわとり(雌鶏)の飼育現場を見る機会を得ました。日本では、にわとりの卵もにわとりの肉もどの様な場所で、どのようにして飼育されているかというのを私は見たことがありませんでしたので、今回はとても良い勉強になりました。こうして今45歳になりました。恥ずかしい・・・。


では、さっそくご覧下さい。まず鶏舎は下の写真のように、縦が約70mほど、横幅が15mほどの大きな建物です。窓は一つも無くて密閉された部屋といった感じです。野鳥などが侵入出来ないようにしているのでしょうか? そして、片側の壁に付いた大きな換気扇が轟音をたてて回っています。鶏舎内の汚れた空気を排出しているようです。



中に入って扉を開けると、真っ暗で何も見えません。でも生暖かい空気と何かがたくさん居る気配を感じました。すぐに農家の方が照明を点けてくれると、びっくり! 下のように地面いっぱいに鳥がいる事がわかり、その数の多さに驚きました。縦に伸びる線のようなものは、鶏に水とえさを与えるためのラインで、天井側からパイプによって一定の時間ごとに自動で供給されています。赤く見える部分は円形になっていて、360度どの方向からでもにわとりが、くちばしを突っ込み、えさを食べたり、水を飲むことができるようになっています。また、室温と明るさ(日照時間)も、照明器具などによってコンピューターで制御されていて、いかに短時間で大きく育ち、肉が多く生産できるように計算されたプログラムになっているそうです。



建物の外をもう一度見ますと、そこには飼料が備蓄できるサイロのような設備があり、ここからパイプラインで、餌が自動供給されるようになっています。ほとんど人手が掛からないように設計された言わば、「自動鶏肉製造プラント」といった様子です。鶏の体を介して、野菜や穀物を食肉に変換する化学工場という感じです。



地面に手を当ててみると、土とおがくずが混ざったような柔らかさで、そこからは、手に温かみが伝わってきます。床暖房のような心地よさです。これほどの数のにわとりが糞や尿を絶えずしている割には、臭いはあまり感じません。それにしても、鶏の数がとても多く、地面が見えないくらい密集しています。足の踏み場がないほどです。にわとりは、運動することもままならず、ただ餌を食べ、その場にしゃがみこみ、眠り、また起きて食べる・・・・。この繰り返しの生活を約1ヶ月から40日ほど続けた後で、引き締まっていないぶくぶくした体型のままで、鶏肉としてトラックで運ばれ出荷されるそうです。屠殺した後、骨や皮や血を取り除き、スーパーで売られているトレーに入った綺麗な精肉からは思いも寄らない現実を目にしました。生まれてから死ぬまでに一度も外を飛び回ったり遊ぶこともなく、太陽を見たこともなく、じっとその場にいて時が経つと、肉になるために・・・・。




一方こちらは、3月(2007)に行った北陸地方のとある町の外れにある「にわとりの卵」を生産する農家の方の鶏舎です。鶏舎の回りには、緑色をした金網で囲まれた地面があり、そこににわとりが出てきて、自由に運動が出来るようになっています。地面に自然に生えた雑草なども食べています。下の写真の矢印は、その出入り口です。にわとりは人の姿を見つけると、ここから一斉に飛び出してきます。餌がもらえるのかと思い、かなりの段差がある斜面にもかかわらず、飛び降りるような勢いで走ってきます。どれもとても元気です。



葉が広いキャベツやレタスなどが好きみたいで、金網越しに野菜くずを入れると、我先にとくちばしで突きながら食べています。



下の写真は鶏舎の中の様子です。鶏舎の両側は一面窓になっていて、外の新鮮な空気が常に鶏舎内に行渡るようになっています。先ほどのフランスの鶏舎と違い、鶏が自由に動ける数しか飼育されていません。鶏舎の外周は密閉されていないので、すずめやカラスなどの野鳥も出入りできるそうです。でも、いつも運動しているのと餌に気を使っているために、鳥インフルエンザに感染する危険性も少ないとこの農家の方がおっしゃったことが印象的でした。やっぱりにわとりは、外で放し飼いにするのが自然だと感じました。



偶然にもこうして3月と4月に全く違う育て方をしている農家の様子を見ることが出来てとても勉強になったど同時に考えさせられました。どちらが良くてどちらが悪いということではなく、どちらも今の社会に必要とされているから、違った飼育法があるのだと思います。大事なことは、消費者がこうした実際の生産現場に違いがあることを知った上で、きれいになった卵や肉がどの様にして食卓に上っているのかを考えて食べることだと思います。特に日本で出回る多くの鶏肉や卵などは、先のフランスのような農場というよりも化学プラントのような場所で大量生産されたものであることを認識すべきです。チーズもそうですが、どういう育てられ方をして出来たミルクを原料にしているかで、出来上がるチーズの風味は大きく違ってきます。


そしてさらに、思いは別のことまでに及びました。チーズを輸入している私が言うのも何ですが、世界の人口が激増している現代では、野菜を多く摂る様な食生活に変えていく必要があるとも感じています。結局は、肉(牛、豚、鶏、その他)も卵もミルク(チーズ、バター、クリーム)も家畜に食べさせた野菜・穀物を家畜の体内で変換させて得られる食品だからです。家畜に餌として与える大量の野菜や穀物があれば、多くの人の食料に充てる事も出来ます。今すぐに全ての肉や卵やチーズを食べないベジタリアンのような食生活をすることは難しいと思いますが、自分の食生活も含めて考えるきっかけとなった2つの生産現場の見学でした。



フランスのめんどりを育てる農家と日本の鶏卵農家(鶏肉の生産現場)