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アッツァ・ヨゼさんは搾乳をマーノ(手)でします。(ORISTANO,Bauladu,Sardegna)



2月18日(月)(2008)の朝7時半過ぎにピアランナさんの車で牧場に向かいました。夫のヨゼさんは、7時前からもう先に行って、搾乳の準備をしているそうです。昨夜は晴天だったので、放射冷却でとても冷え込みました。車の温度計は、外気温が0度を指していました。霜も降りたのか牧草地も薄っすらと白くなっています。
 
私達が着くと、ヨゼさんは搾乳をしていました。牛が立っているその場その場に小さな椅子とバケツを持っていくと牛は分かっているのかその場にじっとして搾乳が終わるのを待っていました。

ヨゼさんは、朝7時から搾乳を手作業で行ないます。この日も地平線にようやく太陽が顔を出したところでした。

ヨゼさんのやり方は、こうです。朝の搾乳が終わると親子は一緒に牧場で生活をします。もちろん子供は、お母さんのおっぱいを飲むことが出来ます。(それを6ヶ月ぐらい続けるのです。)夕方、ヨゼさんは再び牧場に来て、今度は親と子供を別の場所に分けます。親は牧草地に、そして子供は干し草のある畜舎に入れます。こうすることで、約12時間は、子供にミルクを与えないので、その分を次の朝に搾乳するのです。だから、ヨゼさんが得られるミルクの量は、通常の半分以下しかないのです。

親子の場合は、こうして搾乳の時だけロープで親の角に子牛をくくり付けています。

さて、上の写真のように、こうして半日ぶりに親子が畜舎近くで再会すると、子供はお乳を飲みたいので、すぐにおっぱいをくわえます。そこでヨゼさんは搾乳が出来るようにしばし子供を親の角にロープでくくりつけて、じっと動かないように固定します。

デモンストレーションではなく、毎日の仕事で機械を使わずに手で搾乳している人にイタリアとフランスで出会ったのは、今までで初めてでした。

この間に時間にして30秒ほどで搾乳を終えるのです。全部搾ると子牛が飲む分がなくなるので、搾る量を手加減をしているそうです。

搾ったミルクは、タンクに集めます。一日に一度だけ朝に搾乳しています。全部でも30リットル前後しか取れません。

白いバケツに溜まったミルクは、運搬用の蓋があるアルミニウム製のミルクタンクに移されます。これで30リットルほどしかありません。
 
下の写真のように双子の赤ちゃんの場合は、ミルクの飲みっぷりがすごいようです。まだ生後、2週間ぐらいなので、草もあまり食べられません。というよりも草よりもミルクを欲しがります。ヨゼさんが双子が居た畜舎の扉を開けると搾乳を終えて、外にいるお母さんのところにまっしぐらに走って行きました。そして、二頭は、おっぱいを吸いはじめました。

夕方から翌朝まで離れ離れになっていた双子の子牛が、朝になってお母さんのおっぱいにまっしぐらで駆け寄りました。

夫のヨゼさんの仕事はここまでです。このミルクを使い妻のピアランナさんが、ひょうたん型のチーズやトレッチョーネという三つ編みしたような形のチーズをつくるのです。出来たチーズは自家用として家族で食べたり、アグリツーリズモをしているので、泊まりに来るお客さんの夕食に出して喜んでもらっている様です。私達も頂きましたが、これは一般に店で売られているチーズとは全く違いました。とてもおいしかったです。
 
現代のようなハイテク社会においても、このご夫婦の様にローテクノロジーの農業をやっていて、それで暮らして行けるなんて、何ともうらやましい社会と言うか国だなぁと思いました。労働の基本は、自分でやれるだけの量を考えてその範囲で毎日続けていける事だと思いました。手での搾乳は確かに能率は悪いですが、その分、設備投資が不要です。だから莫大な借金漬けの事態を招かないので、気持ちも追い込まれていないのが良いと思います。日本では、生き残りを賭けてなのか酪農が大規模化する傾向にある様ですが、それをヨゼさんが見たらどう感じるのでしょうか?いろいろな事を考えさせられる朝になりました。


アッツァ・ヨゼさんは搾乳をマーノ(手)でします。(ORISTANO,Bauladu,Sardegna)