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山奥でやぎのチーズを作る農家とやぎの様子。2007年6月



6月15日(金)(2007)の午後は、BIENVENUE A LA FERME のガイドブックに出ていたやぎを飼ってチーズを作っている農家の様子を見に行きました。ここのチーズは、ランジス市場には出荷していません。生産量がとても少なくて、地元で全て消費されているようです。(直売店と近くの町で立つ市(マルシェ)で売ったり、少量を同じ地域のチーズ専門店に卸しているとのことです。)
 
この地域も山々が白い岩が出ている特徴的な地形になっています。オリーブの協同組合からずっと山の奥まで車を走らせてようやく目的の農家に着きました。

ガリッグといわれる白い岩盤がむき出しの山肌近くの斜面に生える牧草を食べるやぎの群れ。青い空と白いガリッグと植物の緑のコントラストが南フランスの一つの風景です。

午後3時はとても日差しが強いです。高度も垂直に近いように感じられるほど高いです。その中でもやぎは元気に草や花を食べていました。呼びかけても食べるのに夢中なのか寄ってきません。もしや、これはあまり可愛がられていないヤギなのかという不安がよぎりました。
 
しばらく観察しているとやぎの生態はとても面白いとより思うようになりました。下の写真では、木に何か美味しい食べ物があるのか木に足を掛けて立ち上がって懸命に首を伸ばして何かを食べています。なかなか身軽なんだと思いました。

美味しいものが高い位置にあるとこうしてやぎは立ち上がるのです。ミルクが一杯入ったおっぱいが、重心を低くして体勢を安定させているのかもしれません。

茂みに入り込んで、奥にある食べ物を探しているやぎもいます。一頭一頭のやぎの食べ方は、皆違うところが個性的で面白いと感じました。このように外に出て、山に自然に生えた植物も食べているので、やぎにとっては良いことだと思いました。

早くしようと相手を急いて、石を投げたり、枝木で叩くものが、動物を飼う資格はないと思います。

しかし、一瞬目を瞑りたくなる様な光景を目にしました。飼い主が、やぎを畜舎に早く戻したいのか、やぎ目掛けて小石を投げたのでした。また、枝木を拾ってむちのように使って、やぎを叩いたのでした。これは、いけません!
 
こういうことをする人間がいるから、私達が最初に声を掛けた時に、ここのやぎは寄ってこなかったのでしょう。日頃から飼い主が、やぎを可愛がっていなかったのです。もう、とても頭に来ました! こんな農家のチーズは買いたくありません。暴力を認めるのと同じ気がするからです。私の哲学の一つには、「良い人間は、美味しいものを作る。」というのがありますが、それと同時に、「美味しい物を作る人が、良い人間だとは限らない。」というのも真だと思います。この人のチーズがたとえ美味しくても私は買いたくありません。それは例えばレストランの調理場で下の者に暴力を振う有名な料理人の食べ物を口にしたくないのと同じです。世間やマスコミが、味が・雰囲気が・サービスが、☆3個だとか1個だとかと言っても、私にはそんなことは関係ありません。他人の評価なんてどうでもいい事です。「良い人に出会い、その人が作ったものを食べたい!」だけなのです。4月のロワールの旅では、セバスチャンやフィリップさんやエマニュエルさんなど、皆とても優しくて素晴らしい方だったので、フランス人でもこういう酷い人もいるのかととても残念でした。しかし、ランジス市場の仕入れ担当のイヴさんなら今回の農家とは取引しないと思いました。人間をよく見ているイヴさんだからこそ、ブーゴーさんや先の人たちのような生産者と取引をしているのだと思います。美味しいよりも暴力を見逃さない事の方が私には大事です。せっかく高くて澄んだ青い空の下で仕事が出来るのに、何とこの人は情けないことか?と感じた訪問でした。


山奥でやぎのチーズを作る農家とやぎの様子。2007年6月