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チーズマーケットの店長が羊のハードチーズを作りました。(南フランス/TARN/Cazes-Haut/Teyssode)



6月21(木)のお昼にブーゴーさんとお友達のトーマスさんご夫婦と一緒に昼食をあのボンバルディエール(LA BOMBARDIERE)で食べました。ブーゴーさんがトーマスさんを紹介してくれたのです。
 
トーマスさんは、ローマでFAO(国連食糧農業機関)の仕事をしていたそうですが、その後一転して、妻のパトリシアさんと一緒に畜産業を営みたいと考えて、イタリアや南フランスで使われなくなった牧場を探していたそうです。ちょうど9年ほど前にブーゴーさんの近くの村(Teyssode)でようやく落ち着ける場所を見つけました。地域の人たちの協力もあり、最初30頭から始めた牧畜も今では300頭までに増えて、ミルクの生産量も安定してきました。そして、現在は良質な羊のチーズが常に作れるようになりました。(トーマスさんのチーズ工房は、Bergerie de Cazes-Haut と言います。)熟成期間が短い柔らかいチーズは、奥さんが近くの3つの町で開かれるマルシェに行って売っています。。
 
おいしいチーズを求めてフランス全土を歩くあのランジス市場のイヴさんの目にもトーマスさんのチーズが目に留まり、「これはおいしい!」と認めてもらったそうです。トーマスさんはイヴさんに褒めてもらったことをとても嬉しそうに話してくれました。そして5年ほど前からランジス市場にも安定して出荷出来るようになっています。ブーゴーさんのお友達でしかもイヴさんも認める人とは・・・。そんな素晴らしい人に出会えるとは、・・・。とても幸せなことだと思いました。みんなで美味しい食事を楽しんだ後に、さっそく私が運転する車でトーマスさんのチーズ工房にみんなで向かいいました。

事務職から一転、チーズ作りを始めた二人。英語、イタリア語、フランス語を話します。エネルギーの溢れていて、一緒にいるだけで元気が出ます。

昼食が終わったのが午後4時半ごろでした。車から降りて、牧場の周辺や畜舎などを案内してもらいました。その後で牧草地に放牧されていた羊を畜舎に戻す頃だったので、小学生の息子さんがポニーに乗って牧羊犬と一緒に羊を畜舎に戻す様子を見ることも出来ました。その後で行う搾乳の様子も見せて頂きました。2匹の犬がいい仕事をして、トーマスさんの作業を手伝っていたのが、印象的でした。また、羊に与えている餌についてや出産時期やミルクの年間を通した生産量の推移なども教えて頂きました。こうしてあっという間に3時間ほどが過ぎたので、ホテルに戻ることにしました。そして、何と明日の朝には、チーズを作る様子を見せてくれるというのです。これはいいチャンスです。とても嬉しくなりました。
 
次の朝10時にチーズ工房に着きました。まず始めに部屋に入る前に履いている靴にカバーを掛けて、外の土が中に入らないようにしました。そして、手を肘のところまで石鹸でしっかりと洗いました。エプロンをして、準備OKです。(そう言えば、帽子をかぶるのを忘れていますね。)


それでは、その羊乳のハードチーズの作り方の一部を写真でご覧下さい。たくさん撮った写真の中からこれらの写真に絞るにはかなり悩みました。今回だけでは、十分ではないので、またの機会に詳しくお知らせしたいと思います。

 

1.幾つかの段階を経てようやく羊のミルクが固まりました。そこで、ピアノ線を6本張った金属製の道具を使って、カードを切りました。サイコロ状に四角く切った様子が、写真です。温度を上げながら、カードに含まれる水分を外に出します。トーマスさんが、両腕を大きな釜に入れて、全体をよくかき混ぜています。

 

2.しばらく作業をしているとカードから水分がかなり抜けたようで、写真のように粒状になってきました。これでOKです。釜の下の栓を開いて水分を抜き取ります。この水分は、乳清と言い、これを別の鍋で煮ると羊乳のリコッタが出来ます。(とても美味しかったです。)

 

3.いよいよハードチーズの型枠にこのカードを入れていきます。始めにステンレス台の上に細かい網のような物を敷いて、釜からカードすくってその上に広げます。

 

4.型枠にカードを入れる前に、この段階でカードを上から両手で押しながらある程度、余分な水分を抜きます。カードは弾力があり皮膚の様で、まるでおばあちゃんの背中を指圧をしているような感じがしました。

 

5.水分がいくらか抜けたカードをハードチーズの型枠に少しずつ入れます。入れる度に上から両手で押しながら、水分を抜いていきます。短時間に行わないとカード同士がくっ付かなくなってしまうのです。そのせいでチーズの中に空洞が出来てしまい、品質が下がるのを防ぎます。

 

6.型枠の2〜3倍の量のカードを入れて、ひたすら上から押します。ようやく型枠の大きさにまで小さくなってきました。これはかなりの力仕事ですので、この作業だけは男性のほうが向いていると思います。

 

7.こうして3人が約3時間をかけて、150リットルのミルクから羊のハードチーズが11個(一つで約1.5キロ)出来ました。これで300頭の羊の一日の搾乳量の約半分かと思うと、とても少ないチーズだなぁと思います。売り上げからいろいろな経費を引いて、親子3人が食べて行けるのかと心配になりました。


この後、チーズをひっくり返したり、塩をふって表面を拭いたりと時間を掛けてチーズを熟成させていきます。そして、約3ヶ月から半年経った後にいよいよ出荷出来るそうです。(ハードチーズは換金出来るまでに時間が掛かって大変ですね。)今回私達が作ったチーズは、9月と12月に札幌に届く予定です。初めて作った羊のハードチーズ。今からその味がとても楽しみです。こうしてミディーピレネーにもう一つ行きたいチーズ工房が出来て本当にいい旅となりました。


チーズマーケットの店長が羊のハードチーズを作りました。(南フランス/TARN/Cazes-Haut/Teyssode)