PAUの屋根付きマルシェには、地元農家が持ち寄る農産物が集まります。2007年8月 |
8月10日(金)(2007)の朝、NOEから高速道路に乗り、約160km先にある大きな都市、PAUに行きました。ここには、マルシェが金曜と土曜日に立つので、それを見に行きたいと思っていました。外でのマルシェは、日用品が主体でしたので、その近くにある屋根付きのマルシェ(LES HALLES)をのぞきました。下の写真のように天井が高くて、とても大きな建物でした。 |
中に入ると、今まで見てきた屋根付きのマルシェとは違うことがすぐに分かりました。何とここはバスケットコートにもなっていたのです。うーん、これは素晴らしいアイデアです。このマルシェも毎日、24時間で営業している訳ではないので、使わない時には、スポーツを楽しむ施設として利用しているようです。或いは、もともとスポーツ施設だったのが、今ではマルシェに利用されているのかも知れません。 |
お目当てのチーズを売る人を探しました。このバスケットコート2面の広さには、地元の農家の方達が、季節の野菜や果物やはちみつ、チーズ、肉製品などの新鮮でおいしい食品を出しています。仕入れていない自分達で作った食べ物なので、出所がはっきりとしているのが魅力です。この横には農家ではない、いろいろな食料品の専門店が営業しています。肉屋さん、魚屋さん、ハム屋さん、お惣菜屋さん、オリーブ屋さん、パン屋さん、チーズ屋さん中華惣菜を売る店などです。 |
さて、農家の集まるバスケットコートには、チーズを売る農家が4軒ほどありました。その中心は、やはりこの地方の名産となっている羊乳で作られたハードチーズです。その中には、オッソ・イラティーAOCというチーズがありますが、それに拘らない独自の製法で作られる一点物の自慢のチーズを買う事ができます。 |
チーズは多くても3種類でした。牛乳製と羊乳製、そしてその混乳製です。羊製のハードチーズがこの中では値段が高かったです。牛乳製で9ユーロ/kg、羊製で14ユーロ/kg前後でした。しかし、一般的なチーズ専門店で買うとこれ以上にするので、それを知っている地元の人はお目当ての農家の店に列を作って買っていました。 |
この頃で朝11時ぐらいでしたが、町のどこもかしこも空気がのんびりしています。働いている人が1割で、あとの9割の大人は休暇で遊んでいるような雰囲気が漂っています。空はすっきりと晴れて、白い雲が高く澄んでいます。太陽の日差しは強いですが、カラッとしていて湿度が低くさわやかな日でした。まるで北海道の5月の様に気持ちのいい天気でした。ヴァカンスだからといって、リゾート地に行って休むのではなくて、じっくりと時間をかけて普段の生活を楽しんでいるのかもしれません。気が付いたのは、買い物に来る人は働き盛りの男性が多いのです。何だかうらやましい気がしました。仕事に疲れていない、エネルギー切れしていない男性が多いのは、いい国である一つの目安だと私は考えています。いくらお金を稼ぐ旦那が多くても、彼らが仕事で疲れていたのでは、専門店を回って歩く体力やマルシェで並んで待つ心の余裕が残っていないのです。だから、そういう人は結局は、奥さんが買ったものを食べるだけになったり、それなりの品質のスーパーでまとめて買うしか出来なくなっていくのです。 |
マルシェが存在することで、地元農家の人と顔見知りになって、美味しくて安全なものを買うことが出来るフランスは素晴らしいです。スーパーマーケットだけではなくて、専門店やマルシェなど買い物に多様性があることは、消費者にとってもとても良いことです。でも、真似をして日本でマルシェや専門店を増やしたとしても、余り意味が無いのでは?と私は最近確信しています。専門店やマルシェを増やすことよりも、日本に心と時間に余裕がある人が増えていかないと、せっかく作ったマルシェや専門店もいずれは廃ってしまいます。そして、結局はスーパーマーケットだけしか残らない社会に戻ってしまうのです。せっかく良い食品がマルシェや専門店にあったとしても、今の日本人なら出かける時間や心のゆとりが無いからです。毎日の過酷な仕事で体が疲れてしまい、列に並んだり何軒もの店を回る体力や気力が残っていないから無理なのです。やっぱり、真似をするなら店を増やすことではなくて、根本的な問題、そうです! 日本中で労働条件をもっと向上させていかないと何にもならないと思います。 |
PAUの屋根付きマルシェには、地元農家が持ち寄る農産物が集まります。2007年8月 |