こうして宴は、夜の10時頃まで続きました。いろいろな話を聞くことが出来ました。私達もチーズマーケットの話をしました。お二人は60歳になられた位の年齢ですが、とても若々しくてエネルギーに満ち溢れていました。それでも、収穫の時期には人手が全然足りないようです。以前は地域の奥さん達に収穫の時だけ仕事を頼んで何とかやって来られたそうですが、近年は高齢化の波が押し寄せて、働けるお年寄りも少なくなってしまい、全ての梨の収穫をたった二人でやらなくてはならない状況が続いているそうです。 |
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しかしそれにしても大分にある田舎はどこも素晴らしいです。松木地区にも大いなる自然が残っていて、朝夕の寒暖の差が大きい気候を生かしておいしい果物が収穫できます。都会から来る中学生は、ここでいろいろな農業体験を通して、作る楽しさや野菜のおいしさを知り、吉武さんご夫婦の温かい心に触れることが出来ます。そうした子供達は、此処に来て本当に良かったと後で手紙をくれたり、中には帰る時になって、帰りたくないと泣き出す子も多いようです。それを聞いてなるほどなぁと思いました。会ってまだ数時間しか経っていませんでしたが、私達も吉武さんにまた会いに来たいと思いました。 |
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こうした農家民宿というシステムがあるお陰で、自分よりも年上の人たちがどの様にして生きて来たのかや今どんな暮らしぶりをしているのかなどを知ることが出来ます。それも親戚や会社関係の知人などではなく、全く違う土地で暮らす初対面の人たちの話を聞けるのですから、これほどのチャンスは中々ないと思います。人生の先輩である彼らの話を聞いて、私自身がこの先どのようにして生きていくのかとを考える上でも大いに参考になる出会いでした。お二人に出会う事が出来て本当に良かったです。 |
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「日本の田舎もまったくもって素晴らしい!」イタリアやフランスの田舎に住む農家の人たちと同様に自分で作ったおいしい農産物があり、それらを材料にして美味しいお料理を作る時間も持てます。都会の人が知らないだけで、田舎の人たちは実に美味しいものを毎日食べているのです。 |
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しかし、田舎に住んで豊かな食生活が出来るように成るには、都会で雇われで働いている人には想像できない位、厳しい仕事を乗り越えなくてはならなかったんだなぁと私は思いました。元々此処には、与えられる仕事(就職先)が余り無かったのですから、食って行ける仕事をまず自分で創めないといけません。その為には周りにある自然を相手にするしかありません。自らが大地に働きかけ、剪定をして、果実に袋をかけ、雑草を刈り取り、病害虫と戦い、猪を追い払い、自然災害を極力避けながら、秋になってやっとの思いで野菜や果物を収穫をします。でも、それがゴールではありません。それを選別して箱に詰めて自分でトラックを運転して市場に出荷したり、或いは道の駅に売りに行ったりして収入を得ているのです。収穫した全ての梨が売れるわけではなくて、規格外にされたり、虫に喰われていたりと思うような収穫量が上がらないのが現実のようです。そうしてやっと田舎でお金を得て自活できるのです。これは並大抵の努力では出来ないと感じました。その証拠に多くの若者は、自分の親達の仕事のきつさに希望が持てないのか、違う仕事を求めて田舎を後に出て行ってしまうことが多いようです。だからこそ残って今もなお田舎で暮らしている人は、ある意味で選ばれた特別な人なんじゃないかと私は感じています。だれもが田舎で暮らして行けるほど、現実は甘くはありません。田舎では、いろいろな意味でそれなりの覚悟が無ければ暮らすことが出来ないのです。吉武さんの様な農家が自活して田舎で暮らして来れたのは、厳しい難関を乗り越えられたからこそだと私は思いました。そしてついに何十年もの間ここで生き抜いてきた彼ら農家の人達の姿を見るだけでも私はここに来る意味があると思います。そんな彼ら農家の人と一日でも一緒に過ごすことは、私達都会に住む者にとって生きて行く上で大きな参考になるではないかと思います。「休日にはもっと田舎へ行こう!」そうすれば、今の生活に役立つ何かが見つかると私は思います。 |