「どんな人も一度に全てを手に入れることは出来ない。」

「どんな人も一度に全てを手に入れることは出来ない。」・・なんて云われても、血気盛んな２０代の頃の私なら、聞く耳持たずだった気がします。やる気満々。なんでも手に入れようと力が入っていたような気がします。手に入れたい目標に向かって、努力することを否定しているわけではありません。しかーし、いろいろと努力しても、この世というのはそうそう自分の思いどおりには、ならないんだという事が年をとるとともにだんだんと分かってきます。少し引いた場所に立ち、謙虚な気持ちを持っていたならば、希望しているものとは違う結果に対しても、悲しんだり、残念がったり、人を恨むというような気持ちにならないのではと思います。 私が、こんな気持ちに変わっていったのは、チーズマーケットを興し、ヨーロッパの方たちと付き合うようになってからだと思います。飲食店さんに来週入るチーズの予約を頂いて、いざ輸入してみると、オーダーしたチーズが入っていない、全然少ないなど、とても困ったことが何度もありました。 どうしよう。なんてお詫びすればいいんだろう。頭がぐるぐると回ります。また、なぜ載っていないの？とクレームをつけたこともありました。しかし、こうしたことは、誰かを責められるものではないと思うようになりました。ユーロの人たちは私たち日本人よりも、こうした事に悪びれることはありません。「私のせいじゃないんだ。私はベストを尽くしたのだから、どんな結果も受け入れるしかない。」といった感じです。方や日本ではクレーム、クレーム。また、会社もクレーム対策に躍起。でも、人生にはいろいろとあるのです。うまくいかないこともあれば、なんでも思ったとおりになる時もあるのですから。こうしたスタンスを持っているお陰で、彼らは私たちよりもみな、くよくよせずに人生を楽しんでいるような気がします。国民所得も高く、世界中の欲しいものが何でも手に入る日本人だけど、こうした心の余裕を持っていないから、幸せそうに見えないのかもしれません。 私もこう思うようになってから、何だかとても過ごしやすい。生活しやすくなりました。ストレスがぐっと減った気がします。無理な予約も取りません。お客様にも入らないこともありますから、と予めお断りしています。また、自分がどうしても手に入れたいものがあれば、相手にそれを準備できるだけの十分な時間があるように注文します。（それでも、手に入らないこともありますが、・・・。）いろいろあるから人生は楽しいと思えるようになったのも、この言葉のお陰だと思います。

「どんな人も一度に全てを手に入れることは出来ない。」